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目 次

序 日本海軍服について  3

幕末の海軍服 ………………………………………………………………………………………17

慶応元年頃 幕府海軍 御軍艦役  20
慶応3年 幕府「長鯨丸」水夫  21
慶応2年 幕府海軍 御軍艦役  22
慶応3年 幕府海軍 御軍艦役並  23
慶応4年-明治2年 幕府海軍「回天」 御軍艦役並勤方蒸気役一等  24
慶応4年-明治2年 幕府海軍 軍艦「蟠龍」御軍艦頭(艦長)  25
慶応4年 幕府海軍「富士山」艦 下級乗組員  26
慶応4年 幕府「富士山」艦 小頭  26
慶応4年 幕府「富士山」艦 水夫  26
維新戦争の薩摩藩海軍  28
明治2年 薩摩藩軍艦「春日」軍医  28
明治2年 薩摩藩軍艦「春日」三等士官  29

明治期の海軍服…………………………………………………………………………………31

明治3年11月制定 海軍士官制服  34
明治3年11月-4年12月 海軍中尉 略衣  34
明治3年11月-4年12月 海軍少佐 正衣  34
明治3年11月制「下等士官以下ノ部」  36
明治3年11月-5年9月 一等火夫制服  36
明治3年-5年9月 「龍驤」艦の水夫  37
明治4年12月制 海軍士官服  38
明治4年-6年 海軍少将の正衣  38
明治4年-6年 海軍少尉の常衣  39
海軍兵学寮から海軍兵学校へ  40
明治4年-6年 海軍生徒 略衣  40
明治6年-16年 海軍生徒 礼服  41
明治4年-12年 海軍生徒 夏季略服  42
機関生徒について  43
明治13年頃 機関生徒 夏季常服  43
明治6年制「海軍武官服制」  44
明治6年-16年 海軍大佐 大礼服  44
明治6年-16年 海軍少尉 大礼服背面  45
明治6年12月制定 海軍武官・文官制服  46
明治6年-16年 海軍中医監 略服  46
明治6年-16年 海軍大尉 常服  47
明治6年12月制「海軍文官服制」  48
明治6年-9年 秘書官 大礼服  48
明治9年-15年 大秘史 大礼服  48
明治9年-16年 主計副 常服  49
明治6年-16年 看病夫 常服  50
明治6年-16年 水夫上長 常服  51
明治6年「服制」の諸工水火夫  52
明治6年-20年 一等砲夫 礼服  52
明治6年-16年 一等水夫 常服  53
明治6年-9年 海兵隊歩兵中尉 大礼服  54
明治6年-9年 海兵隊砲兵少尉 常服  55
明治6年-9年 海兵隊歩兵少佐 略服  56
明治6年-9年 海兵隊歩兵伍長副 略服  57
明治6年-9年 海兵隊砲兵曹長 礼服  58
明治6年-9年 海兵隊楽隊鼓手 礼服  59
明治6年-9年 海兵隊楽隊長 礼服  60
明治6年 海兵隊楽隊楽手 常服・略服  61
明治10年-16年 軍楽隊楽長 礼服  62
明治10年-16年 軍楽隊楽手 常服  63
明治15年 軍艦「比叡」陸戦隊  64
明治15年 軍艦「比叡」陸戦隊長 大尉  64
明治15年 軍艦「比叡」陸戦隊 水兵長  64
明治15年 軍艦「比叡」陸戦隊 一等水兵  64
明治16年-26年 海軍大佐 礼服  66
明治26年以降 海軍大佐 礼服  67
明治16年-23年 一等機関工手 夏服  68
明治16年-22年 警吏 礼服  69
明治16年 軍楽隊礼服の改正について  70
明治16年-23年 軍楽隊楽手 礼服  70
明治16年-23年 軍楽隊楽長 礼服  70
少尉補から少尉候補生へ  72
明治16年-20年 少尉補 夏季正服  72
明治20年 少尉候補生 正服  73
明治26年12月改称 少尉候補生 軍服  73
明治37年7月改称 少尉候補生 礼服  73
明治17年 通学士官の私製略服  74
明治20年-23年 少尉常服  75
明治20年-26年 大尉 礼服 正服  76
明治26年-29年 大尉 正服 軍服  76
明治20年制 機技部准士官 礼服 軍服  77
明治23年-26年 副直将校 少尉 常服  78
明治26年-37年 副直将校 少尉 通常軍服  78
准士官について  79
明治30-37年 上等兵曹(准士官)通常軍服  79
明治26年頃 士官 半白服と着服信号旗  80
明治33年制 士官 夏服と防暑ヘルメット  81
明治23年-37年 二等兵曹 礼服  82
明治23年-37年 一等兵曹 礼服  83
明治20年-37年 一等厨夫 正服  84
明治期 下士卒下着と防寒襟巻着装法  85
明治17年-29年 准士官 短外套  86
明治28年頃の厳寒期 士官 防寒服装  87
明治16年-33年 一等下士 雨衣と救命袗  88
明治33年-大正 下士官兵 雨帽・防水衣袴・救命袗  88
明治23年-大正12年 舷門番兵 当番外套  89
日清戦争の黄海の海戦について  90
巡洋艦「高千穂」砲員の水兵  90
砲手の二・三等兵曹  90
旗艦「松島」の水兵 事業服  90
明治29年-37年 大機関士 半白服  92
明治27年-29年・37年 大佐 戦時の礼装代用の通常軍服  93
明治30年代 行軍訓練の信号術練習生  94
明治30年代 一等信号兵曹 通常軍服  95
明治35年頃夏 操銃訓練の水兵 夏服  96
明治29年 水兵 通常軍服、37年 軍服  97
明治23年-26年 軍楽師 礼服  98
明治26年-37年 軍楽師 正服  98
明治23年-26年 三等軍楽手 礼服  99
明治26年-37年 三等軍楽手 正服  99
明治29年-40年 准士官以上 雨衣  100
明治23年-37年 外套に襟巻の尉官  101
防寒被服について  102
日露戦争の厳寒期 艦橋の艦長 防寒外套  102
日露戦争 舷門番兵の水兵 防寒外套  103
日本海海戦の消毒済みの戦闘服  104
日本海海戦の一等・二等下士 事業服  104
日本海海戦の伝令の水兵(背面)  105
日露戦争 海軍陸戦隊のカーキー色被服  106
明治37年 旅順 攻囲軍・海軍陸戦重砲隊の中尉  106
明治37年 旅順 攻囲軍・海軍陸戦重砲隊の下士  106
明治37年 旅順 攻囲軍・海軍陸戦重砲隊の水兵  106
日露戦争期 軍艦乗組士官の茶褐色夏服  108
明治38年-大正3年 海軍中将 ラミー製夏衣  108
明治-大正 煙管服の機関兵  110
大正期 麦藁帽に事業服の水兵  111
明治20年制 下士卒 外套  112
大正9年-昭和20年 下士官兵 外套  112
明治33年以降 下士卒 雨衣  113
明治38年-昭和6年 軍属文官 従軍服  114
明治37年-大正8年 軍医官 二重外套  115

大正・昭和期の海軍服………………………………………………………………117

明治後期―大正の海軍生徒  120
明治16年-大正9年 海軍生徒 夏服  120
明治29年-37年 海軍生徒 通常軍服、明治37年-大正9年 海軍生徒 軍服  120
明治37年-大正9年 海軍生徒 半白服  120
少尉候補生の遠洋航海  122
明治39年-大正9年 機関少尉候補生 外国上陸時の服装  122
大正-昭和期 少尉候補生 事業服  123
大正3年-8年 第二艦隊参謀長 大佐 軍服  124
明治40年-大正3年 一等水兵 礼服  125
明治40年-大正3年 一等軍楽手の軍服  126
大正3年-9年 軍楽長 背広型軍服  127
大正3年 青島攻囲軍 海軍陸戦重砲隊海軍卒 カーキー色被服  128
大正3年 青島陸戦重砲隊の海軍卒 茶褐色防寒外套  129
シベリア出兵と大正9年制防寒被服  130
大正10年 亜港防備隊 スキー訓練の兵  130
大正10年 亜港防備隊 スキーの下士官  130
草創期の航空被服  132
大正5年-14年 航空衣袴・航空夏帽  132
大正5年-14年 航空夏衣袴・航空帽  133
海軍監獄と監獄官吏について  134
大正3年-昭和 海軍監獄看守 制服  134
在監人とその被服について  135
大正3年-昭和3年 未決囚 長青衣  135
明治23年-昭和3年 既決囚 袷短赭衣  135
日本委任統治領・南洋群島  136
大正8年-11年 南洋群島在勤海軍文官 判任官制服  136
大正12年 陸戦訓練の兵学校生徒・隊長  137
大正9年から昭和9年の海軍生徒  138
大正9年-昭和9年 兵学校生徒 半白服  138
大正9年以降 兵学校生徒 外套  138
大正9年-昭和9年 経理学校生徒 礼服  140
大正14年-昭和4年 士官・操縦員 航空夏帽・航空夏衣袴  141
大正14年以降 水上機作業員 航空作業靴・作業帽  142
大正15年 東郷元帥 正装  142
大正3年-昭和13年 海軍中将 礼装  143
昭和2年-13年 海軍中将 正装  144
昭和2年-13年 海軍中尉 正装  145
昭和2年-13年 海軍中将 夏季礼装  146
大正3年-昭和13年 海軍大将 通常礼装  147
大正9年-昭和16年 軍楽兵曹長 礼装  148
大正8年-昭和16年 軍楽兵 礼装  149
大正9年-昭和17年 一等軍楽兵 夏服  150
大正9年-昭和17年 一等軍楽兵 軍服  151
大正9年-昭和13年 兵曹長 通常礼装  152
大正後期―昭和の特務士官・准士官  153
昭和12年頃 陸戦演習の統監部員 特務中尉 軍服  153
大正9年 海軍少将 毛皮裏の外套  154
大正8年-昭和17年 主計中尉 外套  155
大正8年-昭和17年 将官 マント型雨衣  156
昭和17年以降 海軍少佐 士官用マント  156
昭和2年 上海派遣海軍陸戦隊  158
昭和2年 上海派遣海軍陸戦隊の軍医大尉  158
昭和2年 上海派遣海軍陸戦隊の水兵  159
大正11年-昭和6年 舷門番兵 三等水兵  160
昭和初期 公用使の水兵  161
マル秘「新編海軍兵須知」作者不詳  162
大正・昭和期 甲板掃除の海軍兵  162
昭和12年冬 溺者救助訓練の水兵  162
昭和初期の海軍航空被服  164
昭和6年 搭乗員 航空衣袴・航空靴他  164
昭和4年制 搭乗員 航空夏服・航空防禦帽  165
電熱航空服について  166
昭和4年式革製の電熱衣袴用航空服  166
昭和4年式電熱航空服  166
昭和12年以降 電熱航空服  166
昭和2年-6年夏 上海共同租界巡邏の中尉  168
昭和2年-6年夏 上海常駐陸戦隊の水兵  169
昭和7年 上海事変 上海陸戦隊  170
昭和7年 上海陸戦隊 投擲手の水兵  170
昭和7年 上海陸戦隊 中隊長 中尉  171
大正9年-昭和17年 副直将校の特務少尉  172
大正4年-昭和18年頃 甲板士官  173
昭和9年-13年 少尉候補生 礼服  174
昭和9年-19年 海軍生徒 夏衣  175
昭和7年-17年「巡検」の先任衛兵伍長の一等兵曹 軍服  176
昭和7年-17年「総員起こし」当直教班長の一等兵曹 夏服  177
大正14年-昭和15年頃 焚火訓練の機関兵  178
大正14年-昭和15年頃 焚火訓練の教員  179
昭和12年 日中戦争 上海戦  180
昭和12年 上海特別陸戦隊司令官  180
昭和8年-12年 上海特別陸戦隊信号兵  181
昭和12年-15年 陸戦隊被服  182
昭和13年 南京 陸戦隊服の主計大尉  182
昭和13年 中国 陸戦隊の一等水兵  183
昭和12年式冬用整備作業服  184
昭和12年式夏用整備作業服・整備靴  185
防暑被服について  186
昭和12年 下士官兵 白色防暑作業服  186
昭和13年 准士官以上 淡茶色防暑作業服  186
昭和13年 空母「加賀」下士官兵 防暑作業服  186
昭和13年 中国 第四艦隊陸戦隊参謀  188
昭和9年制 普通防寒服  188
昭和13年 中国 第四艦隊陸戦隊の水兵  189
昭和9年制普通防寒被服  189
昭和13年 揚子江 砲艦の乗員 防毒面と着色事業服  190
昭和13年頃 中国基地航空隊の中尉  191
昭和14年 広東攻略戦 艦上の水兵  192
昭和13年 揚子江 砲艦の艦長 少佐  193
昭和6年頃 北洋警備艦の特製防寒外套  194
昭和14年制式 自動自転車服  195
昭和13年製 九八式防毒衣  196
昭和15年頃 陸戦隊服と防蚊頭巾  197
防水被服について  198
大正14年-昭和14年 ゴム引き製防水服  198
昭和14-20年 アルミナ製防水作業服  199
烹炊作業の主計兵  200
昭和10年代 炊事作業 主計科の旧兵  200
昭和13-19年頃 炊事作業の下級主計兵  201
昭和16年頃 銃剣術防具  202
昭和16年頃 装填衣  203
患者被服 傷病衣  204
大正7年-昭和10年代 海軍病院の傷兵  204
看護兵から衛生兵へ  205
昭和7年 看護兵の診察着  205

太平洋戦争の海軍服 …………………………………………………………………207

正装・礼装を軍装で代用する場合  210
昭和13年以降 海軍大将 正装代用の第一種軍装  210
太平洋戦争 予備少尉 礼装代用の第二種軍装  211
大正8年-昭和19年 中佐 第一種軍装  212
太平洋戦争前期 連合艦隊参謀 少佐 軍服  213
昭和16年 落下傘部隊降下服  214
太平洋戦争の始まり  215
昭和17年 大型水上機の偵察員  215
昭和17年 落下傘部隊司令 降下服  216
海軍落下傘部隊について  217
昭和17年 落下傘部隊 戦闘服装  217
昭和17年 南方派遣艦 手旗信号の兵  218
昭和17年 南方派遣艦 防暑服の下士官  218
昭和17年 南方派遣陸戦隊中隊長 中尉  220
昭和17年 ニューギニア 陸戦隊の歩哨  221
昭和17年10月制 白色の士官防暑服  222
昭和18年 南方基地 連合航空隊司令官  223
「予科練」について  224
七つボタン予科練服の制定の経緯  224
昭和17年制 甲種飛行予科練習生 軍服  224
昭和17年制 甲種飛行予科練習生 夏服  224
昭和15年頃 甲種飛行予科練生 体操服  226
昭和10年代 兵学校生徒 夏用体技服装  226
明治末期-昭和 兵学校生徒 棒倒し服  226
昭和 兵学校生徒 体技服(体操服)  226
特年兵について  228
昭和18年頃 手旗訓練の特年兵  228
昭和17年 食卓番の特年兵  228
昭和18年5月 陸戦演習の特年兵  228
昭和18年頃 操砲訓練の特年兵  230
昭和17年制 海軍生徒 陸戦事業服  231
昭和17年 第三十一航空隊の士官  232
昭和18年 戦闘機搭乗員 二等飛行兵曹  233
昭和17年制 下士官 第一種軍装  234
昭和17年の北太平洋 特製防寒被服  235
昭和17-18年 キスカ島の第五警備隊 混合防寒服装  236
昭和17-18年 キスカ島 陸軍兵冬服の司令  238
昭和17年 ニューギニア上陸の陸戦隊員  239
海軍予備学生・予備生徒  240
昭和19年 海軍予備学生 外套  240
昭和19年 予備学生 軍服 第一種軍装  241
昭和18年 海兵団の新兵と衣嚢  242
昭和18年 一等水兵 第二種軍装  243
太平洋戦争 海軍工厰 文官・工員  244
昭和17年制文官従軍服冬用 海軍工厰技手  244
昭和17年制文官従軍服夏用 海軍工厰造鋼部長(高等官)  244
昭和18年制 海軍工廠工員 作業服  244
昭和19年-20年 海軍生徒 第三種軍装  246
太平洋戦争期の海軍兵学校と生徒数  247
昭和20年 海軍生徒 褐青色夏服  247
第三種軍装着装例  248
昭和20年 旅順 兵科予備学生 第三種軍装着装  248
昭和20年 海南島 防暑服の下士官  249
昭和20年 飛行兵長 第三種軍装  250
昭和20年 営門番兵の水兵 第三種軍装  251
昭和20年 上下分離式航空服と味方識別標式  252
昭和20年 戦闘機搭乗員の中尉  253
昭和19年-20年 第101特別陸戦隊(特攻S特)一等水兵  254
昭和20年 第101特別陸戦隊 特製戦闘服装  255
昭和20年 神風特別攻撃隊の白絹の襟巻  256
昭和20年 「回天」搭乗員の訓練服装  257
昭和20年「回天」整備作業服の少尉  258
昭和20年「回天」基地 防暑服の少尉  258
回天特別攻撃隊  260
昭和20年「回天」出陣式 第三種軍装の下士官特攻隊員  260
特攻兵器「回天」について  261
昭和20年「回天」出陣式 第三種軍装の特攻隊の少尉  261
昭和20年 水中特攻「海龍」隊員  262
昭和20年 水上特攻「震洋」隊長  263
昭和20年 海上特攻 戦艦「大和」  264
昭和20年「大和」機銃群指揮官 少尉  264
昭和20年4月 戦艦「大和」下士官  265
昭和18年 海軍工作学校練習生 軟式潜水服  266
昭和20年「伏龍」特攻隊 潜水服・装具  267

日本海軍の記章と階級表………………………………………………………………269

兵科士官の襟章・肩章・正衣袖章・正肩章・正帽右側飾章  270
識別色について  271
海軍下士官兵臂章の変遷  271
善行章について  272
官職区別章と特技章  272
昭和17年制 下士官兵臂章(官職区別章・特技章・善行章)  278
大礼服肩章・正服肩章・正肩章(エポレット)  279
長剣・短剣  280
剣帯前章  282
明治の袖章  283
大正−昭和の袖章  289
日中戦争から太平洋戦争の袖章  290
肩 章  291
襟 章  293
文官制服・文官従軍服  295
航空被服官等識別章 作業服官等識別章  297
背広につける記章  297
昭和の陸戦隊被服から第三種軍装にいたる変遷  298
海軍武官の階級と兵種の変化  298

参考文献  305

索 引  309

あとがき  325


あとがき

 この本の題材は日本海軍の、幕末から昭和20年の太平洋戦争の終わりまで、つまり主として帝国海軍の服装をとりあげています。つたない一冊ですが、明治はもちろん、昭和も遠くなり、今書き残さなくてはますます判らなくなると、昭和の子の私の思いが、この本をつくる気持ちを駆り立てたのです。帝国海軍がすでに歴史の一ページに化したともいえる昨今、軍服の図鑑もヴィジュアルな歴史書の一つとして見てほしいと思います。

「女なのになぜ軍服に関心を持つのですか?」こんな質問を幾度も受けてきました。
 私は映画の衣裳デザインを仕事にしてきました。それにはファッショナブルな現代劇も、時代劇も、明治物もあり、シナリオに則して時代風俗を調べ、登場人物の設定を考えて扮装を描き、衣裳を準備してもらうのです。作品の傾向はさまざまで、昭和44年(1969)には『日本海大海戦』を担当しました。この仕事は日露戦争期の海軍服の再現が重要で、調査が急がれたのですが、多人数が同じ服を着た軍服という服装史上重要な一分野は、戦後の風潮もあって研究対象としては忌避され、とくに海軍服に通暁する服装史家は皆無でした。そこで映画『日本海大海戦』の服装については、東郷神社の蔵書整理の元海軍中佐の方に史料のご教示を受けました。その方は亡くなられるまで私の海軍研究を助けて下さる得難い先生でした。
 映画のための服装研究は、作品ごとに対象を変える一過性のものですが、軍服の研究は仕事に関係なく続けることを決めました。そして、いつか必ず、丁寧な絵に正確な解説をつけた軍服図史を作りたいと念願したものです。
 さて、軍服史研究を志したものの、市販の資料は実に少なく、国会図書館や国立公文書館や防衛研究所戦史部図書室に通って、「服制」その他の公文書類を手写し、時にはコピーを申し込み、知識の集録に努めました。膨大な書類綴りやマイクロフィルムのリールから必要な文面や図を探し出すのは、見つければうれしいのですが、まことに根気がいる作業でして、探索はまだ終了したわけではございません。始めは陸海軍・警察・鉄道の制服史料まで、映画の仕事に役立つかと渉猟しましたが、その後、海軍に限り、そして海軍服の史料を理解するために、軍隊制度・海軍生活の種々相、兵器や戦況の推移まで、基本的な海軍知識を一通り持つことに努めました。とくに同時代の写真はもっとも確実な視覚史料であり、「服制」上の疑問点を氷解してくれる場合がありますので、写真は古書店にも通って入手に努め、また親子二代の海軍士官の方から昔のアルバムをお借りしたり、古写真のコレクターの方がコピーして送って下さるなど、おかげさまでありがたい助っ人にも恵まれました。

「海軍服制」の附図は年代によっては出来不出来があり、かなり稚拙なデフォルマシオンがされたのもあり、短ジャケットの裾のカーブとか、フロックコートのボタンの間隔とか、皺の寄り方とか、「服制」で判断しにくい点を、解明してくれるのは写真です。また写真は、それが確かなものであれば、「服制」の裏付けだけでなく、髭の形、剣の吊り方や帽子のかぶり方など、各時代の海軍さんのさまざまな時代の風潮を感得させてくれます。リアリティのある絵を作るには、その時期、その職務、それぞれの姿を撮った写真を見つめて描くのが、一番確かな方法ですし、画技の未熟な私には願わしいことでした。モデルとした人名は少ししか記載しませんでしたが、描いている間いつも、その人物の海軍人としての生涯を思いました。海軍史の年代順に各階級や役目の多種類の絵姿を描きたいと考えましたが、史料を努力して集めても、適した写真がない場合もあり、とくに幕末・明治初期の海軍下士卒の写真はごく少なく、大勢の集合写真の一部分をルーペで拡大して注視したり、いかにも明治初期の髭の顔写真に触発されて、胸から下はそれらしい階級の軍服に自己流にポーズをつけて描き、史料写真のかけらもないものは、のぞましいポーズの写真に、設定した年代の規則に基づき、制服・階級・年齢を表現しました。写真はその時代の雰囲気を的確に教えてくれますが、それを描き分けるべき描写力の未熟を痛感した次第です。
 このように約35年たゆみなく研究と画作を続けたと申したいところですが、映画の仕事にかかれば軍服研究は中断し、家事にも追われ、そして海軍研究から派生したものとはいえ、昭和58年(1983)に『史話まぼろしの陸軍兵学寮』(六興出版)を出させていただくなど、調査対象が一時転移することもありました。このように海軍服装図史の進み方は遅々としたものでしたが、昭和61年から平成元年6月まで、『PX』誌(KKワールドフォトプレス)に「日本海軍特殊被服」の連載の機会を得たのはラッキーで、今回はその時の絵も再録させていただきました。
 海軍服について書く機会が増え、それにつけても海軍について教えて下さる旧軍人の方の親切と熱意はありがたいことでした。ただし聞き書きは、こちらの知りたいことだけを語って頂けるわけではなく、話題が核心に到るのは時間を要するのでした。ご年配の方が多いので、すっかり忘れたとおっしゃる向きもあり、また当方の知識を過大評価してか、特殊用語を駆使して砲術の問題を延々と解かれる先生もあり、手紙には手紙でお礼を申し上げ、電話には電話で早く反応し、頂戴した写真には適したお礼に気を使います。日々の生活と仕事に追われて、気配りの行き届かない時もあり、返事が遅いと叱られもしましたが、今ではみな懐かしい思い出で、お蔭様で公文書にない話を知ることができました。
 この本を海軍服だけに限ったのは、以前からの種々の原稿執筆が海軍に偏ったゆえとはいえ、子供の時から海軍にはとくに親近感以上のものを持っていました。小学生の私が海軍省へ貯金箱を抱えて献金に行ったのは確か昭和15年(1940)でした。タンカーの機関長をしていた父は、太平洋戦争中、予備海軍の機関中佐でした。戦争末期の報道と、戦後に読んだ記録類の、胸を締めつけられる思いは、絵を描きながらもこみ上げてきます。

 本書は海軍服装を描き、解説した本ですが、長い間の探索の結実として、単なる説明文ではなく、「論文」として読んでほしい部分もあります。例えば幕末から明治5年(1872)まで水兵服がなかったという説は、間違っているので否定しました。そしてまた「海軍服制」における「フロック製」の誤記を正したいと考えました。
 被服にまつわることは、絵に則してできるだけ書き込んだつもりですが、装具・兵器に関しては専門研究者のご教示を得たいと思っています。
 また、この本の仕上げにあたって、描きたいと思いながら体力的時間切れで描けなかったものがいくつかあり、例えば、咸臨丸の水夫、明治4年海軍文官服制、明治8年会計学舍生徒制服、明治10年代の海軍鍬兵、明治の海軍工廠工員、明治22年海軍造船工学校生徒、伝令使または副官、軍医の手術衣姿、フロック製式の夏水兵服、明治の海軍監獄官吏の外套、石炭搭載作業の恰好、昭和の海軍機関学校生徒のスキー訓練服等々で、いささか残念に思っています。

 このような本を造りたいと願いながら早くも35年の歳月が流れました。このたび戸高一成さまのご紹介で並木書房が刊行してくださることになり、長年の意図を実現できることになりました。同社編集部には、さまざまなご配慮ありがとうございました。
 しかし、はじめから思えば仕上げるのが非常に遅くなったわけで、日本海軍や海軍服に関して、さまざまなご教示を得た先生方の多くはすでに世を去られ、本を手に取っていただけないのが残念であり、申し訳なく思っております。この方たちとの出会いがなければ、この本を作る発想はなかったかもしれません。ご指導ありがとうございました。
 故人になられた先生方、土山広瑞さま、土肥一夫さま、瀬間喬さま、黛治夫さま、中島親孝さま、関口鉱造さま、福井静夫さま、山岡大二さま、筑土龍男さま、桑原正文さま、清水清さま、堀籠次男さま、鎌田芳朗さま。心より感謝を捧げます。

 親切に史料の提供をして下さり、教えて下さった海軍の方々、ありがとうございました。
 壱岐春記さま、小林新一郎さま、渡辺哲夫さま、田中健一さま、橋本四郎さま、堀籠八重子さま、三原誠さま、中村一さま、中村明さま、深堀道義さま、仲平勝司さま、玉本一さま、門奈鷹一郎さま、須藤岩夫さま、武田不二男さま。心よりお礼申し上げます。

 励ましや資料のご提供、本当にありがとうございました。
 東郷会さま、雨倉孝之さま、太田臨一郎さま、谷村政次郎さま、平山晋さま、津田裕さま、小川恭一さま、高橋昇さま、藤本正行さま、直井明さま。おかげさまでやっと一冊の本が仕上がりました。
                                            
柳生悦子(やぎゅう・えつこ、旧姓:福富)
昭和4年、神戸生まれ。東京・麻布で育つ。昭和21年、東京都立目黒高等女学校卒業。同年、東京芸術大学図案科入学。在学中より映画美術家・松山崇に師事し、フリーの映画美術助手を務める。24年、大学を卒業。28年より映画・演劇の衣裳デザインに携わる。31年『ロマンス娘』の衣裳デザインを手始めに、東宝作品『裸の大将』『社長シリーズ』『若大将シリーズ』『お姐ちゃんシリーズ』『忠臣蔵』『風林火山』『戦国自衛隊』、松竹作品『五辧の椿』『智恵子抄』『日蓮』、日活作品『踊る太陽』『城取り』、大映作品『未完の対局』『敦煌』、米国作品『MISHIMA』(日本未公開)など、100本を越える映画の衣裳デザインを手がける。44年公開の『日本海大海戦』で衣裳デザインを担当したのがきっかけで、軍服史、とくに日本海軍服に興味を持ち、以来、今日まで文献・資料を集め、海軍関係者に取材しながら、研究・調査をつづける。35年以上にも及ぶ研究の成果を、自筆の250点余りの人物カラーイラストとともに本書『日本海軍軍装図鑑―幕末・明治から太平洋戦争まで―』としてまとめる。平成2年『BEST GUY』を最後に映画の仕事を辞め、現在は風俗史、軍装研究を中心に活動している。雑誌に『洋服を着た旗本たち』『女たちの決戦服』(別冊歴史読本)、『黄海大海戦』(歴史群像)、『日本海軍特殊被服』(PXマガジン)、『海軍士官帽』『海軍陸戦隊の服装史』(東郷)、『日本海軍水兵服』(風俗)、『海軍服とファッションの関わりについて』(水交)、など、記事を多数寄稿。著作に『史話まぼろしの陸軍兵学寮』(六興出版)、『日本海軍史(第6巻第14編「服装」)』(海軍歴史保存会)、「下関戦争と英国海兵隊」(『横浜英仏駐屯軍と外国人居留地』横浜開港資料館編)がある。日本風俗史学会評議員、東郷会理事。