「まえがき」にかえて
戦争を知らない国の危うさ
「世界は戦国乱世に突入した」「第三次世界大戦はすでに始まっている」──そんな声が聞こえる時代になった。
もはや、「憲法第9条があれば日本は侵略されない」といった主張を無条件に信じる人は、ごく一部に限られるだろう。多くの日本人は、「生き残るためには、それなりの備えが必要だ」という現実を理解しているはずである。
しかし、では具体的に何をすべきか──そう問われたとき、答えられる人は多くない。
これまであまりにも平和な環境に慣れすぎた結果、日本人は国防や有事について「考えること」そのものができなくなっているのが現状ではないだろうか。
その最大の理由は、基礎知識の欠如にある。
国防について考えようにも、判断の前提となる知識がない。これは本来、きわめて異常な状態である。
日本は民主主義国家であり、国民は主権者である。
主権者である以上、国家運営に関する基礎的な知識を持つことは不可欠だ。そのために学校教育が存在し、社会科が設けられている。
ところが、日本の社会科教育には、軍事に関する知識がほとんど含まれていない。
国防や軍事は、本来、政治の一部であり社会の営みの一部である。それにもかかわらず、その知識が抜け落ちているという現状は、深刻な問題と言わざるを得ない。
だからこそ、私は「教科書が必要だ」と考えた。
書店には、いわゆるミリタリー愛好家向けの書籍が数多く並んでいる。しかしそれらは、国家の主権者である国民が、政治や社会の一部として軍事を理解するための入門書としては適していない。
そこで本書では、誰もが基礎から学べる「軍事の教科書」を提示したいと考えている。
●目 次
「まえがき」にかえて
戦争を知らない国の危うさ 1
第1章 戦争はなぜなくならないのか(戦争と国家の本質)15
1 戦争とは何か? 16
2 戦争は誰でもできるか? 17
3 戦争はなぜ犯罪ではないのか? 19
4 昔は誰が戦争をしたか? 20
5 歴史上、戦争はどれくらいあったか? 22
6 軍隊と警察の違いは? 23
7 交戦権(戦う権利)とは何か? 25
8 国家でなくても戦争できるか? 26
9 交戦者として認められるには? 30
10 軍隊なき国は成立するか? 32
11 宣戦布告は必要か? 34
12 なぜ「戦争」と呼ばれなくなったのか? 36
13 戦争と武力紛争は何が違うのか? 39
14 武力行使は許されるか? 41
15 戦争はなぜ禁止されているのか? 43
16 国家をなくせば戦争はなくなるか? 45
17 武器があるから戦争は起きるのか? 48
18 世界統一すれば平和になるか? 50
19 国家は共通の敵を持つことで成立する 52
20 国家は暴力装置である 55
第2章 国家はなぜ人を戦わせるのか(国家・軍隊・国民の関係)57
21 軍隊は誰が統制するのか? 58
22 軍は暴走するものか? 60
23 軍国主義とは何か? 62
24 愛国心はどう生まれるか? 65
25 愛国心なき民の非業な運命 68
26 国家は愛国心を武器にする 70
27 愛国心が近代社会を作った 72
28 兵役が民主主義を支える? 75
29 ハイテク戦争に徴兵は役立つか? 77
30 国のために戦う必要があるのか? 80
31 降伏すればだれも死なないという嘘 86
第3章 戦争はどうやって勝つのか(戦争の現実とルール)85
32 戦争の勝敗はどう決まるか? 86
33 戦術と戦略は何が違う? 89
34 永世中立は成立するか? 91
35 戦争の目的を見失うな 95
36 戦争の目的と犠牲は釣り合うか? 98
37 なぜ戦争の規模は拡大するか? 101
38 戦争はなぜ長引くか? 104
39 侵略とは何を指すか? 107
40 海上封鎖で国は屈するか? 111
41 海を制する者が富を制する 114
42 地政学とは何か? 118
43 国際法を破ったら罰せられるか? 121
44 核は使えない兵器なのか? 128
45 核の威力は何で測るか? 131
46 戦略核兵器と戦術核兵器の違いは? 133
47 弾道ミサイルとは何か? 135
48 潜水艦発射弾道ミサイルが抑止を担う 139
49 核ミサイルをどう防ぐのか? 140
50「核の三本柱」の費用対効果は? 143
51 巡航ミサイルの利点と難点は? 146
第4章 戦場では何が起きているのか(陸・海・空の戦い方)149
52 核保有国どうしは戦争をしない? 150
53 核独占は大国の横暴か? 152
54 陸軍の組織と教育体系とは? 154
55 師団は陸戦の基本単位 158
56 旅団は小型の師団なのか? 162
57 歩兵の役割とは何か? 163
58 進化する歩兵の装備火器 165
59 部隊の単位は何で決まるか? 169
60 装甲人員輸送車と装甲歩兵戦闘車の違いは? 173
61 見えない敵を撃つ野戦砲兵 175
62 戦車無用論は誤りか? 180
63 艦隊は外交圧力となるか? 182
64 軍艦の条件は何か? 184
65 戦艦はなぜ消えたのか? 185
66 水雷艇・駆逐艦の役割とは? 186
67 巡洋艦はなぜ消えたか? 188
68 フリゲイト、コルベットの区別は? 189
69 魚雷艇、ミサイル艇は有効か? 191
70 原潜と通常潜水艦の違いは? 192
71 対潜水艦戦─音を頼りに潜水艦を追う 193
72 海底と音を調べる見えない戦場 197
73 海上封鎖されたら終わり─機雷と掃海戦 198
74 なぜ空母は海上戦力の主役か? 201
75 戦えない艦が艦隊を支える 203
76 防空識別圏は勝手に設定できる 204
77 非常に高価な「空飛ぶレーダーサイト」206
78 なぜ緊急発進が起きる? 208
79 撃つ前に目で確かめる210
80 射程より大事な撃つ距離212
81 空対空ミサイルからどう逃げるか? 214
82 現代戦では機関砲の出番はない? 216
83 最後の一撃はやはり機関砲? 218
84 なぜステルス機はレーダーに映らない? 220
85 ステルス機をどう探知するか? 222
86 防空の最後の要─地対空ミサイル 224
87 レーザーは戦場を変えるか? 225
88 戦略偵察─他国を覗く危険な仕事226
89 戦術偵察─低空で見る、撮る、逃げる 228
90 ドローン(無人機)が偵察を変えた 231
第5章 戦争はどこへ向かうのか(見えない戦争と未来の戦場)233
91 対航空作戦─航空優勢は地上で奪う 234
92 航続距離は当てにならない 237
93 宇宙を制する国が戦争を制する 239
94 衛星が止まると戦えない 241
95 GPSが戦争を精密化した 242
96 早期警戒衛星─発射の瞬間を見張る目 244
97 偵察衛星はどこまで見えるか? 246
98 通信衛星─戦争は通信で動く 248
99 衛星を狙う静かな戦争249
100 乱世を生き残るためには? 251
あとがき
かのよしのり
1950年生まれ。自衛隊霞ヶ浦航空学校出身。北部方面隊勤務後、武器補給処技術課研究班勤務。2004年、定年退官。主な著書は『鉄砲撃って100!』『スナイパー入門』(光人社)、『銃の科学』『狙撃の科学』『重火器の科学』『拳銃の科学』『ミサイルの科学』『歩兵の戦う技術』『銃大全』(SBクリエイティブ)、『図解入門 最新 戦車がよ〜くわかる本(共著)』(秀和システム新社)、『自衛隊vs中国軍』(宝島社)、『自衛隊89式小銃』(並木書房)など多数。
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