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おわりに(一部)

 本書は、海軍の諸先輩が残してくれた多くの貴重な教えに加えて、筆者が防衛大学校入校以来、四〇年間に接した多くの上司、同僚、部下から学んだこと、そして自らが務めた二〇あまりのスタッフやリーダー配置での経験をもとにしています。
  振り返ってみると、命ぜられたさまざまな配置で、良きスタッフ、良きリーダーたらんと試行錯誤し、ようやくコツをつかんだ頃には任期が終わるということを繰り返してきました。「配置が人を作る(次々とポストを経験することで資質を高める)」と考えれば納得もできますが、同じ試行錯誤でももう少し見通しをもってうまくやれなかったかと反省することがあります。
  先輩リーダーの見取り稽古をし、先人の伝記を読み考える、そういうプロセスも大切ですが、実践的な「試行錯誤の手引き書」があってもよいのではと考えました。また、拙著『作戦司令部の意思決定』では、意思決定の具体的なプロセスを詳述しましたが、そのプロセスの主役であるリーダーやスタッフがどう振る舞うべきかを示すべきだとの思いもありました。そのような意味で本書が何らかの参考になればと願っています。

 

目 次

はじめに─「海軍式」とは何か? 1

第1章 海軍の仕事術 17

軍艦・艦隊・司令部 17
指揮官先頭の伝統 22
「分」を大切に 29
「フレキシブルワイヤーたれ」34
「左警戒、右見張れ」40
船乗りの教え 42

第2章 海軍意思決定の失敗 54

誤った情勢判断 54
「前動続行」の弊害 58
「前動続行」から「独善」へ 62
成功体験の絶対視 65
行き過ぎた「精神至上主義」67
情報の軽視 72
希望的観測の弊害 74
スタッフ組織の欠陥 77
フィードバックの欠如 83
「空気」という妖怪 87

第3章 意思決定の仕組みを作る 95

「社風」に左右されない意思決定プロセス 95
ステップ1「使命を確定させ、達成への道のりを示す」98
ステップ2「具体的な行動方針を立てる」108
ステップ3「相手と自己の行動を対抗させ、最善の行動方針を決定する」109
ステップ4「実行段階へ移行する」110
実行段階での意思決定 111

第4章 チームを作る 121

リーダーとスタッフの相互作用 121
スタッフの役割 124
「自分式」のリーダーシップとは 126
意思決定の「落とし穴」133
「落とし穴」を避けるリーダーの心得 141
レッドチームと悪魔の代弁者 145

第5章 リーダーの資質と個性 148

リーダーに求められる資質 148
「感性のリーダー」か「理性のリーダー」か 155

第6章 リーダーの役割 164

組織の「象徴」たれ! 165
決断と実行の「決裁者」173
変化を恐れぬ「改革者」179
組織を動かし目標を達成する「執行者」188
部下を育てる「先輩・教育者」192

第7章「戦う組織」のリーダーシップ 198

「自分式」リーダーシップを打ち立てる 198
戦うリーダーに求められるもの 209
有事の心構え1「決断して指示を与え、責任をとる」213
有事の心構え2「動揺するな、我慢せよ」218
有事の心構え3「敗けぬ気と油断せざる心」220

おわりに 225

主要参考資料 231

付録1 悪魔の代弁者 233
付録2 一般的な論理上の誤り 234
付録3 レッドチームによる批判的検討の手法 236

堂下哲郎(どうした・てつろう)
1982年防衛大学校卒業。護衛艦はるゆき艦長、第8護衛隊司令、護衛艦隊司令部幕僚長、第3護衛隊群司令等として海上勤務。陸上勤務として内閣危機管理室出向、米中央軍司令部先任連絡官、海幕運用2班長、統幕防衛課長、幹部候補生学校長、防衛監察本部監察官、自衛艦隊司令部幕僚長、舞鶴地方総監、横須賀地方総監等を経て2016年退官(海将)。米ジョージタウン大学公共政策論修士。現在、日本生命保険相互会社顧問。著書に『作戦司令部の意思決定─米軍「統合ドクトリン」で勝利する』(並木書房、2018年)がある。