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はじめに

 中国は、チャンスの国なのか、リスクの国なのか、この議論はいまだに続いている。
  だが筆者からすれば、それは、ガンは良いものなのか、悪いものなのかと言っているのに等しい。ガンが体に良いと主張しようものなら、間違いなく笑い者とされるのに、中国を世界経済の救世主だと主張する政治家や研究者たちは今も大勢いる。
  なぜいまだに、中国をチャンスと見る政治家や研究者が存在するのか?
  それは彼らが短期的な利益に目を奪われて、中国の本質が見えなくなっているからではない。生物学的観点から「中国人の本質」を見ていないからである。まさかと思うかも知れないが、生物学的観点から中国を見れば、中国が「ガン」であることは明白である。
  なぜ中国は「ガン」なのか? その答えを、中国人の本能、環境問題、経済問題、犯罪事情、巨大な公共建設である三峡ダムの危険など、さまざまな実例をあげながら本書で検証していく。
  さらに「中国ガン」は、ほかのガンと同様に遠隔転移するから始末が悪い。移民、留学、投資、密入国などのルートをへて、中国のガン細胞は、世界中に散らばり、転移先の国々でさまざまな問題を引き起こし、その国の社会や文化を変質させている。
  そのうえで中国人自身も、自らのガンによって苦しめられているという皮肉な現象も起きている。ガン細胞の増殖によって、中国の大地は汚染され、砂漠化が進んでいる。水や農作物も毒にまみれている。貧富の格差は想像を絶するものがあり、持たざる者の怨嗟の声は日増しに高まり、各地で暴動が頻発している。その結果、名誉・権力・富を一身に集める中国の政府高官たちは競って海外へ逃げ出そうとしている。国の舵取りをする高官自らが中国の行く末に希望を持っていないのだから、まさに末期ガンの状態と言えよう。
  なぜ四千年もの歴史を誇り、賢いはずの中国人がガンを治せないのか? 実はそれこそがガン細胞の宿命であり、ガン細胞自身が持っているジレンマなのだ。
  正常な細胞であれば、「アポトーシス」という自己犠牲の生命法則によって、生体の均衡を保つが、ガン細胞は自己犠牲の精神をまったく持ち合わせていない。ただひたすら無限大に拡張しようとする。
  おそらくガン細胞自身も無限に拡張していけば、いずれは自らを死に至らせることを頭では理解しているのだろうが、本能には勝てないらしい。
  こうしたガン細胞特有の「本能」を理解しなければ、ガンの退治はできないのである。

 さて、ガン治療の最善の方法は、完全に切除することである。しかし、中国ガンは切除できないほど巨大化し、世界の隅々に転移してしまっている。今や残されている唯一の治療手段は、中国ガンを無害化することである。どうやって無害化するかと言えば、中国のガン細胞の巨大な塊を分割してお互いに牽制し合うように仕向けることである。
  ただし、それを外部の力で強引に分割させると逆効果になる。ガン細胞の分割無害化はあくまでも内部からでなければならない。
  人間の体の中には、生体防御としてガン細胞を退治する「NK(ナチュラルキラー)リンパ球」という免疫機能が存在する。現在、このNKリンパ球を活性化させてガン細胞を退治する研究が進んでいる。中国ガンに対しても同様に、中国内外に存在する免疫機能を活性化させることが有効である。
  幸いなことに、中国国内にもさまざまな「NKリンパ球」が存在している。それは良識あるマスコミ関係者であり、人権活動家であり、法輪功のメンバーであり、天安門事件の犠牲者の家族である。それらに加えて海外の支援勢力もあげられる。
  共産党の独裁国家である中国といえども、民主・自由・人権を強く要求していけば、動揺しないはずがない。同時に、民主国家である日本と台湾が国を挙げて中国の民主化運動を支援すれば効果は絶大である。
  そのためには、まず日本が「中国を刺激するな」という強迫観念を捨てなければならない。「泥棒を刺激するな」と言って戸締りをしなければ、泥棒を喜ばせるだけでなく、自ら進んで被害者になるようなものである。中国ガンを退治するためには、この歪んだ心理を捨て、日本自身が健康にならなければならないのである。
  日本は自由と民主主義と人権を何より大切にする国である。そうでありながら、独裁国家中国の民主化や人権問題について、日本人は関わろうとしない。それどころか全体主義の中国を賛美し、支援しているのが日本のリベラル派の人々である。人権に敏感なリベラル派が、独裁国家の肩をもつというのは奇異な光景である。このような思想的錯乱が、当然のごとく存在していることも、日本病の一つだと言えよう。
  それでも日本は、アジアで唯一中国に対抗できるまっとうな国である。優等生国家日本は「ブラックジャック」という型破りな医者を創り出した。
  実はこの「ブラックジャック」の全集が、今も日本の最高学府である東大の医学部図書館の一階に収蔵されている。私はそれが官僚や研究者を輩出する東大の静かなるメッセージではないかと勝手に解釈している。もしそうであれば、日本はいずれ旧習を打破して新しい時代を切り開く冒険心を取り戻してくれるだろう。
  中国ガンの治療には、ブラックジャックのような医者が持つ既成観念にとらわれない発想と覚悟が必要である。
  私は、日本は台湾人の憧れる「サムライの国」だと信じてこの本を書いた。本書によって、日本人が見ようとしない、あるいは考えて来なかった「中国人の本質」に気づき、日本人が目を覚まして、リーダーシップを発揮してくれることを念じている。



目 次

はじめに 1

1 中国という名のガン細胞 15

   なぜ中国はガンなのか? 15

アポトーシスという自己犠牲の自然現象/利己的で自己中心的なガン細胞/なぜ中国はガン細胞なのか?/増殖し続ける中国ガン細胞/中国ガンのモザイク現象/中国は地球に巣食うガン細胞

   中国ガンに奪われた大気 22

北京の空はいつも灰色/中国の大気汚染は世界の脅威/世界の空気を犠牲にしても経済を発展させようとする中国/空気汚染観測は「内政干渉だ」と非難する中国

   ガン細胞に汚染された水 30

「無錫旅情」の街に突然起こった悪臭事件/汚染の真因は農工業の汚染水/汚染を告発して逮捕された呉立紅氏/太湖の汚染状況はさらに悪化/人類の生存を脅かす中国の水汚染/世界最大の排水溝と化した長江/渤海湾を死滅させた「毒水」垂れ流し/日本も中国水汚染の被害者/環境保護の法整備というアリバイ工作

   ガン細胞が造った不吉な塊「三峡ダム」41

龍脈を絶つ「巨大な化け物」/欲望と本能で生まれた三峡ダム/環境破壊のシンボル/頻発する山崩れや地滑り/「三峡ダムは絶対造ってはならない」と叫んだ黄万里氏/治水は「金になる木」/三峡ダムは決壊する

   犯罪は中国ガン細胞の本能 50

中国独特の「犯罪文化」/風邪で十数万円も請求された日本人ビジネスマン/腎臓を医者に盗まれた台湾人ビジネスマン/薄煕来事件にみるマフィア国家中国の闇/仲間であっても用済みなら消す/日常化・制度化した中国の組織的犯罪

   中国経済のガン細胞体質 57

助け合って生きていく正常な細胞/「劫貧済富」というガン細胞体質の経済/死んでなお財産にしがみつく中国人/権力も利益も名誉もすべて欲しがる中国人/農地強制徴用はガン細胞体質の象徴/「汕尾事件」でわかった中国当局の残忍さ/一億四三〇〇万円の車を乗り回す村の幹部

 

2 世界に転移する中国ガン 65

   中国毒を世界中にまき散らすガン細胞 65

悪性中国ガンは遠隔転移して自他を破壊する/意図的に作った有害製品を世界に売りさばく/ペットも人間も中国毒で死んでいる/系統的に作り出される有毒食品/自分の作った野菜を食べない中国の農民/虫も寄りつかない有毒ハム/毒だらけの魚介類と人毛で作った醤油/食品が安全であれば困るのは役人/金持ちも高官も安心していられる理由/毒は日本から来たとうそぶく中国人の厚顔無恥

   アフリカで展開する中国の石油戦略 77

略奪せずにはいられないガン細胞/巨額のワイロと武器供給でアフリカの独裁者たちを籠絡/虐殺を支援する中国/「オール・バイ・チャイニーズ」のアフリカ進出/中国の在庫処理のはけ口となったアフリカ/日本の活路をも断つ中国の資源獲得政策/遠交近攻で日本を締め上げる中国

   孔子の仮面をかぶったガン細胞 85

詐欺師は必ず仮面をかぶっている/孔子学院の任務/孔子学院は中国ガン細胞の拡散基地/日米の脳内に転移した中国ガン/中国人の面子には一文の価値もない/孔子は「至聖先師」の名に値する人物なのか

   中国人留学生が学術の殿堂を破壊 94

「あっ共匪だ!」/本物の中国人/「本物かどうか」からチェック/中国人留学生が消える/「名利双収」という中国的欲望/推薦状の九〇%は偽物/中国人留学生によって破壊され続ける学術の殿堂

 

3 中国人も中国ガンに苦しんでいる 107

   ガン細胞に食い散らされた国土 107

万里の長城は砂漠化の記念碑/「人定勝天」という中国人の自然観/自然を破壊しなければ生きていけない中国人/煉獄に変わり果てた桃源郷/毒だらけの大地/進むも地獄、退くも地獄

   核汚染で住めなくなる中国 113

震災で露呈した中国人の本性/核実験で汚染されたシルクロード/チベット人も核汚染に苦しむ/二〇三〇年までに一〇二基の原子炉を新設/核兵器より怖い中国の原発

   地獄の中に天国はない 122

金も権力も併せ持つ富裕層/富豪たちの恐怖感/天国に上ったり地獄に落ちたり/広がる中国の「仇富現象」

   海外に逃げる中国の高官たち 129

成功者ほど外国へ移住したがる/海外へ逃げ出す「升官発財」の中国高官/中央銀行が手引きするマネーロンダリング/高官たちが逃げ出す理由/毒だらけの中国に住みたくない

 

4 中国ガンは退治できる 137

   これ以上待てない中国ガン対策 137

崩壊と再生を繰り返す中国ガン/世界に波及する中国問題/風邪薬でガンを治そうとする医者たち

   中国ガンの天敵「NKリンパ球」144

病気の自覚がなければガンは治らない/ガン細胞にも天敵がいた/「免疫寛容」という事なかれ主義/中国内部の七種類のNKリンパ球

   中国ガンが一番恐れる法輪功 149

NKリンパ球の要素をすべて備える法輪功/宗教弾圧は政権崩壊の始まり/形のない組織と驚異的な情報発信力/中国学にも風穴を開けた法輪功/黙々と一本の道を進む法輪功の運動/『九評』で示された中国社会の醜悪面/知識人を取り込む法輪功/海外の国会議員を動かすネットワーク

   天安門事件で生まれたNKリンパ球 158

天安門事件は民主化の原動力/NKリンパ球「天安門の母」/命がけの真相調査/中国政府を告訴/中国人を感動させる反政府運動

   地下教会の信者が増えている 166

羊頭狗肉の政府公認宗教/地下教会を応援する欧米諸国

   反抗するエリート層 169

「氷点週刊」停刊事件に見る異議分子の力/立ち上がるエリートたち/統制しきれない左派の存在

   海外の民主運動家 171

ネット革命宣言/オスロの誓い

   香港の中国に対する嫌悪感が深まっている 174

中国の真実を発信し続けている香港/天安門事件が香港人を啓蒙した/中国人と自認する香港人はわずか一七%

   チベット、ウイグル、モンゴルの反中国運動 176

民族浄化のためのチベット入植/テロリストと決めつけてウイグル人を弾圧/南モンゴルも民族絶滅の危機に瀕している/世界を味方にする反中国の三民族

 

5 日本はブラックジャックになれるか? 180

   幼稚化社会から脱却せよ 180

幼稚化現象が氾濫する日本/文武両道こそが教育の原点/幼稚化の原因/国家変革の意志が希薄な日本の知識人/変革を迫られる日本

   優等生的医者では治せない中国ガン 188

ブラックジャックは日本的発想/東大医学図書館に『ブラックジャック』全巻/ブラックジャックならどうするか/「中国を刺激するな」という金科玉条/日本にしかできない神業とは

   ブラックジャックなら中国ガンを分裂できる 194

中国は解体できる/国の要素をすべて備えている七大軍区/中華帝国の分割は中国人のため/烏坎村事件勝利の三つの要素/中国を分裂させ無害化するための五つの処方箋/情報統制に穴を開けた「アノニマス」/言論統制ができなくなる共産党政権/中国を無害化するために/一瞬にして終わる中華帝国

   日台連合で中国ガンを退治できる 210

「核心的利益」発言は「色試ァ内荏」の現れ/台湾の法理的独立は中国分裂の起爆剤/現実味のある中国民主化運動支援/民主化運動を支援してきた国民党/中国人が傾倒する台湾の民主と自由/台湾は中国の核心的利益ではなく核爆弾/「日本版台湾関係法」を制定し台湾と政府間関係を持とう/アメリカの「台湾関係法」とは/台湾で高く評価された浅野和生教授の「日台関係基本法」私案/中国反体制派も期待する日台連合/中国の民主化を支援

あとがき 225

林 建良(りん・けんりょう)
1958年、台湾台中市生まれ。1987年、交流協会奨学生として来日し、東京大学医学部博士課程を修了する。医学博士。栃木県で地域医療に携わるかたわら、在日台湾同郷会顧問、台湾団結連盟日本代表、メールマガジン「台湾の声」編集長、台湾独立建国聯盟日本本部中央委員、日本李登輝友の会常務理事として活動。また自らが名付け親である「正名運動」も展開中で、台湾独立建国運動のリーダーの1人として活躍。著書に『日本よ、こんな中国とつきあえるか?』(並木書房)、『中国の狙いは民族絶滅―チベット・ウイグル・モンゴル・台湾、自由への戦い(共著)』(まどか出版)
正名運動:在日台湾人の外国人登録証の国籍記載を「中国」から「台湾」に改正する運動。台湾独立運動の主流になる。
「台湾の声」http://www.emaga.com/info/3407.html