おわりに(一部)
海中自衛隊・潜水艦部隊の取材で、5隻の潜水艦に乗ることができた。
各潜水艦で共通して感じたのは、「海中の楽園」だということだ。そこには理想的な人間関係があり、家長とも言うべき艦長を中心に約70人の大家族がいる。
「潜水艦にいる人間はみんないい人です」と取材したサブマリナーは、みな口を揃えて言う。筆者もそう思う。こんな素晴らしい職場が海の中にあるのだ。
筆者は週刊誌記者として40年以上のキャリアがあるが、扱う事件ネタの多くは、他者を傷つけ、批判し、馬鹿にする輩が大勢登場する。そんな社会の裏側ばかり見ていると疲弊するばかりだ。そんな時、海中自衛隊の取材が決まると一気に心が晴れる。素晴らしい潜水艦乗りと話ができ、心身が癒されるのが実感できる取材だった。
その楽しみもついに終わってしまい、今は心にぽっかり穴があいた気分である。うれしいことに次の自衛隊企画が決まったので、通常の取材にも堪えられそうだ。
横須賀基地での最後の取材を終えて桟橋を振り返ると、そこには「たいげい」がどーーーんと浮かんでいた。黒い鋼鉄の巨人が「また、来いよ」と語りかけてくれたような気がした。
これだけ取材をしても、潜水艦が出港し海中に潜ってから実際に何をしているのか、その航海日数もどこに行くかも具体的なことは何も知ることはできなかった。
それを知りたければ、サブマリナーになるしかない。本書を読まれた方で、18歳以上33歳未満であれば海中自衛隊の「海中の楽園」を経験することができます。もちろん「潜水艦適性」は必要です!
目 次
はじめに──潜水艦「せいりゅう」体験学習 1
第1章 潜水艦「なるしお」一泊二日滞在記 13
1、「電機屋さん」山崎海曹長 16
2、「うずしお」女性電機員 上瀬3曹 23
3、「ディーゼル員」小川3曹 31
4、「ディーゼル員」多比良海士長 37
5、「衛生員長」大山1曹 44
6、「魚雷員班長=v今野1曹 50
7、「補給長」秋山2尉 61
8、「水測員」松葉3曹 67
9、「水測員」伊藤3曹 76
10、「水測員」森松3曹 81
11、「実習士官」小林2尉 87
第2章 最強の軍艦「潜水艦」──海上自衛隊の潜水艦と部隊 95
第3章 潜水艦「たかしお」の艦長・副長コンビ 113
1、「たかしお」艦長・柿本文雄2佐 113
2、「たかしお」副長・尾ア3佐 128
第4章 潜水艦「とうりゅう」乗艦記 133
1、「とうりゅう」艦長・伊藤和典2佐 133
2、「とうりゅう」副長・水沼3佐 147
3、「警衛海曹」古屋海曹長 156
4、「給養員」七田3曹 162
5、「電機員」櫻田海士長 166
6、「ディーゼル員」宮嶋3曹 172
7、「水測員」和田2曹 178
8、「海曹士のまとめ役」浅見海曹長 181
第5章 試験潜水艦「たいげい」の任務 186
1、「たいげい」艦長・前田佳宏2佐 187
2、「船務士」東2尉 198
3、「水測員」高野3曹 205
4、「水測員」桑原3曹 212
5、「魚雷員」後藤3曹 217
6、「先任伍長」山口仁海曹長 223
7、「給養員」尾関3曹 229
8、「ディーゼル員」三浦2曹 235
9、「電機員」重黒木2曹 241
第6章 「最強のソーナーマン」松井准海尉 247
第7章 「全艦撃沈!」伊藤?提督?275
第8章 「第2潜水隊群司令」吉田誠1佐 290
第9章 「潜水艦隊司令部幕僚長」戸井雄一郎海将補 299
おわりに 307
小峯隆生(こみね・たかお)
1959年神戸市生まれ。2001年9月から週刊「プレイボーイ」の軍事班記者として活動。軍事技術、軍事史に精通し、各国特殊部隊の徹底的な研究をしている。著書は『新軍事学入門』(飛鳥新社)、『蘇る翼 F-2B─津波被災からの復活』『永遠の翼F-4ファントム』『鷲の翼F-15戦闘機』『青の翼ブルーインパルス』『赤い翼空自アグレッサー』(並木書房)ほか多数。日本映画監督協会会員。日本推理作家協会会員。元同志社大学嘱託講師、筑波大学非常勤講師。
柿谷哲也(かきたに・てつや)
1966年横浜市生まれ。1990年から航空機使用事業で航空写真担当。1997年から各国軍を取材するフリーランスの写真記者・航空写真家。撮影飛行時間約3000時間。著書は『知られざる空母の秘密』(SBクリエイティブ)ほか多数。日本写真家協会会員。日本航空写真家協会会員。日本航空ジャーナリスト協会会員。
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