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訳者あとがき

 初めてMP40サブマシンガンと出会ったのは1970年代。MGC製のモデルガンだったが、トイガンとはいえ、流麗なフォルムに「気品ある凄み」を感じた記憶がある。
  後年、商社の通訳として赴いたタンザニアで汽車に乗っていると一団の民兵が乗り込んできた。先頭の隊長が肩に提げていたのがMP40。部下らが持つソ連製シモノフ自動小銃と比べ、いかにも垢ぬけて見えた。
  当時は第2次世界大戦のドイツ製サブマシンガンとアフリカの民兵がどうしても結びつかなかったのだが、このあたりの経緯も本書が簡潔に説明しており、読者も納得がいくにちがいない。
  MP38とその生産性向上型MP40は戦争映画・ドラマの定番。日本でも知名度が高い武器だ。しかし、「シュマイザー」という通称が誤りであることや、小銃より射程が短いこれらフルオートマチック小火器の存在理由、実戦で明らかになった長所と短所、アサルトライフルとの競合と敗北、そして銃器デザインのみならず大衆文化に与えた影響などはあまり知られていない。
  本書は検証された記述とエピソード、大戦当時の写真などを組み合わせて、このようなトピックを分かりやすく解説している。
  その意味で、本書は単なる武器の解説書や史実をたどっただけの戦史もの≠ニは一線を画している。
  著者のアルハンドロ・デ・ケサダ氏は、欧米の銃器ライターとしては珍しく、トイガンにも詳しく、愛情のこもった視線を向けている。MGCや中田商店、ハドソンといった日本のモデルガンメカーにも言及し、MP40を含む往年のヒット商品も詳しく紹介している。日本のトイガン愛好家には意外かつ嬉しい発見だろうと思う。
  著者は銃関連の著述や戦史研究のほか、特注ライフルなどを製造する銃器会社をフロリダ州で経営している。したがって、複雑なアメリカの連邦および州の銃砲取締の法律にも精通しており、MP38、MP40のようにフルオートマチック射撃が可能な武器を輸入・販売する際のノウハウ、そして、一般市民が所有する場合の手続きについても正確に解説している。
  本書はサブマシンガンの実銃に惹かれる日本のマニアにとって、多くの情報と新しい知見を与えてくれる格好の一冊となるであろう。
  本書の翻訳を通じ「気品ある凄み」を帯びたドイツ軍サブマシンガンへの憧れが息を吹き返した。読者各位の反応が待たれる。
  最後に、監訳者の床井雅美氏には原書に含まれていない貴重な情報と多くの写真を提供していただいた。この場を借りてお礼を申し上げます。

●目次

 

第1章 新たなタイプのサブマシンガン 14

MP38とMP40の起源/MP18.T/MP28.U/フォルマーのサブマシンガン/エルマ・マシンーネンピストーレ/MK36.VとMP36

第2章 MP38の開発とMP40への発展 30

MP38の誕生/MP38の新機軸/MP38の派生型/重大な欠陥とその対策/MP40への改良/制式化された3種類のサブマシンガン/改良型MP40/MP41

第3章 MP38とMP40の弾薬 54

9mm×19(パラベラム)弾/弾薬の種類

第4章MP38とMP40の付属品 61

マガジンのタイプと派生型/マガジンローダー/マガジンポーチ/スリング/銃口カバー/空包射撃装置/冬期用トリガー/減音装置(サウンド・サプレッサー)

第5章 MP40の取り扱い方法 78

MP40の操作手順/装?/射撃/作動不良時の対応/安全装置の操作/簡易分解手順/クリーニングの手順

第6章 戦場のサブマシンガン 92

サブマシンガンの有用性/ドイツ軍歩兵の火力構成/戦場で明らかになったサブマシンガンの長所/MP38とMP40の戦歴/先進的なMP40のポテンシャル/PPSh-41との性能比較/戦後の性能比較試験と結果/MP40の生産性

第7章 MP40が与えたインパクト 134

多大な影響力をもったサブマシンガン/大戦中にもたらした影響/戦後の各国のサブマシンガン/戦後も使用されたMP40/ベトナム戦争のMP40/戦場以外で使われたMP40/再生産されたMP38とMP40

第8章 不朽の傑作サブマシンガン 160

ポップカルチャーでも人気のMP40/MP40の意義と評価/サブマシンガン時代≠フ終焉

[コラム]
   <MP38、MP40の製造会社と刻印>50
   <ドイツ人銃器設計者たちのその後>74
   <1941年クレタ島「マーキュリー作戦」>104
   <1944年8月「ワルシャワ蜂起」>118
   <1980年代「ユーゴ内戦」>140
   <MP40のモデルガンとレプリカ>164
   <無可動実銃>167

参考文献 173
監訳者のことば 175
訳者あとがき 177

アルハンドロ・デ・ケサダ(Alejandro de Quesada)
アメリカ・フロリダ州を拠点に活躍する戦史研究家で、軍用品、軍関連の写真および資料の収集家でもある。カスタム・ライフルなどを製造する銃器会社の経営者でもあり、博物館や映画会社向けの歴史資料提供や時代考証なども行なっている。各種の媒体へ多数の寄稿のほか、オスプレイ社のシリーズをはじめ、25冊以上の著作がある。中南米およびメキシコに関連する事項の第一人者でもある。
床井雅美(とこい・まさみ)
東京生まれ。デュッセルドルフ(ドイツ)と東京に事務所を持ち、軍用兵器の取材を長年つづける。とくに小型火器の研究には定評があり、世界的権威として知られる。主な著書に『世界の小火器』(ゴマ書房)、ピクトリアルIDシリーズ『最新ピストル図鑑』『ベレッタ・ストーリー』『最新マシンガン図鑑』(徳間文庫)、『メカブックス・現代ピストル』『メカブックス・ピストル弾薬事典』『最新軍用銃事典』(並木書房)など多数。
加藤 喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。アラスカ州立大学フェアバンクス校ほかで学ぶ。88年空挺学校を卒業。91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。著訳書に『LT』(TBSブリタニカ)、『名誉除隊』『アメリカンポリス400の真実!』『ガントリビア99』『M16ライフル』『MP5サブマシンガン』『ミニミ軽機関銃』(並木書房)など多数。