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監訳者のことば(一部)

 アメリカ軍がミニミを採用する大きなきっかけとなったのはベトナム戦争だった。
  第2次世界大戦後(正確には朝鮮戦争後)アメリカ軍は、本書にも出てくる分隊支援火器のBARを廃止したため、ベトナム戦争で分隊支援火器をほとんど持たないまま戦闘に臨み、歩兵の近接戦闘支援のためには重くかさばるM60汎用機関銃が使用された。これに対し南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)側は、ソビエトに準じた兵器体系をとり、多くのRPD分隊支援機関銃や75発容量のドラムマガジンと長い銃身を備えたAKアサルトライフルの派生型のRPK分隊支援火器を投入した。
  徒歩によるジャングルや山岳地域での戦闘では、重くかさばるM60は決定的に不利で、アメリカ軍は苦戦した。この経験がのちにミニミ分隊支援火器を採用する大きな理由になったのである。
  本書で著者は「部隊の火力構成のカギは、異なる機能と性能を有する兵器を組み合わせることにある。各兵器の限界を考慮し、組み合わせで互いの短所を補うのだ」と述べている。これは兵器の特性や性能を考察し、評価するうえで忘れてはならない思想である。
  読者もミニミ軽機関銃をこの具体例として、このような視点の重要性を理解、再確認されるにちがいない。

目次

はじめに 

第1章 最強の分隊支援火器 

ミニミ開発の発端/初期型ミニミのメカニズム/革新的な複式給弾システム/過酷な比較試験

第2章 ミニミ軽機関銃のメカニズム 

ミニミの取り扱い手順/標準モデルと空挺モデル/5.56mmと7.62mm口径のミニミMk3シリーズ/M249SAW(分隊支援火器)/M249特殊作戦用火器(SPW)/ミニミ軽機関銃の派生型

第3章 ミニミ分隊支援火器の役割 

戦術面での多様な役割/射手には筋力と持久力が求められる/M249射手1人で歩兵の5倍の弾薬量/射撃を安定させるバイポッド/車両の武装用としても広く使われる/究極の遠隔操作式マウント/新世代の光学照準器/進化する光学照準器/M249分隊支援火器の射撃姿勢/M249分隊支援火器の精密射撃

第4章 M249分隊支援火器の整備と保守

M249分隊支援火器の整備手順/M249分隊支援火器の簡易分解と潤滑油/小さな部品が多く簡易分解が難しいという不満/布製100発容量パックが好まれる理由/M249分隊支援火器の緊急対処法/「M249は一度も故障しなかった」

第5章 戦場のミニミ分隊支援火器 

M249分隊支援火器による制圧援護射撃/戦場で実証されたミニミ分隊支援火器の真価/韓国製K3軽機関銃/M249分隊支援火器の存在意義/銃撃戦の勝利に不可欠な軽機関銃/過熱した銃身を交換して射撃再開

第6章 5.56mm弾をめぐる論争 

M27歩兵自動小銃を選んだアメリカ海兵隊/遠距離戦では明らかに不利な5.56mm×45弾薬/5.56mm弾薬の殺傷力不足/部隊の火力構成─兵器を組み合わせて短所を補う/5.56mm弾薬批判への反論/5.56mm弾の利点を活かしたM249分隊支援火器

第7章 ミニミの時代はこれからも続く

M249分隊支援火器からM27歩兵自動小銃へ/批判されるM249分隊支援火器/精密射撃も可能なM27の優位性/M27IARでは制圧射撃任務はできない/ミニミ分隊支援火器排除の動きに疑問の声/ミニミ/M249分隊支援火器に優る兵器はない

[コラム]
M249SAW(分隊支援火器)の諸元 
M249分隊支援火器の射撃特性 
M249分隊支援火器の射撃の基本(アメリカ陸軍装備品取扱いマニュアルFM23-14)
アメリカ陸軍のM249分隊支援火器に関する保守整備要領標準 
ブラジル軍特殊部隊とミニミ(2005年)
アフガンに展開するイギリス海兵隊第42コマンド部隊(2011年)
イラクにおけるアメリカ海兵隊(2003年)

参考文献 
監訳者のことば 
訳者あとがき 

クリス・マクナブ(Chris McNab)
戦史と軍事テクノロジー分野で著作活動を行っており出版点数は40冊を超える。オスプレイのウェポンシリーズでも活躍しており、『ドイツ軍自動ライフル1941-45』、『MG34とMG42機関銃』および『バーレット・ライフル』など多数。
床井雅美(とこい・まさみ)
東京生まれ。デュッセルドルフ(ドイツ)と東京に事務所を持ち、軍用兵器の取材を長年つづける。とくに小型火器の研究には定評があり、世界的権威として知られる。主な著書に『世界の小火器』(ゴマ書房)、ピクトリアルIDシリーズ『最新ピストル図鑑』『ベレッタ・ストーリー』『最新マシンガン図鑑』(徳間文庫)、『メカブックス・現代ピストル』『メカブックス・ピストル弾薬事典』『最新軍用銃事典』(並木書房)など多数。
加藤 喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。アラスカ州立大学フェアバンクス校ほかで学ぶ。88年空挺学校を卒業。91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。著訳書に『LT』(TBSブリタニカ)、『名誉除隊』『アメリカンポリス400の真実!』『ガントリビア99』『M16ライフル』『MP5サブマシンガン』『MP38/40機関銃(近刊)』(並木書房)など多数。