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目 次

はじめに 1

第1章 レンジャー連隊の訓練と組織 14
レンジャー評価・選考プログラム(RASP)/第75レンジャー連隊の編制

第2章 ジャスト・コーズ作戦(パナマ進攻) 1989年12月20日〜1990年1月31日
第75レンジャー連隊の任務/ロメオ(R)支隊のリオ・アト飛行場急襲/タンゴ(T)支隊のトクメン/トリホス国際空港急襲/ノリエガ拘束

第3章 砂漠の嵐作戦(第1次湾岸戦争) 1991年1月17日〜2月28日
対イラク作戦のレンジャー連隊/イラク軍の通信施設を破壊

第4章 ゴシック・サーペント作戦(ブラックホーク・ダウン)1993年8月22日〜10月13日
ソマリアのタスク・フォース・レンジャー/民兵組織への急襲・拘束作戦/「ブラック・シーの戦い」/2機目のブラック・ホーク墜落/「ブラック・シーの戦い」がもたらした教訓/新たな任務の始まり

第5章 不朽の自由作戦(アフガニスタン) 2001年10月7日〜
アフガニスタンでの特殊作戦/幻のオマル襲撃作戦/ビン・ラーディンを取り逃がす/タクルガル山の激戦/削減されたアフガニスタン駐留兵力/元フットボール選手の非業の死/増大する任務/初めての名誉勲章/アフガニスタンへの兵力増派/「チーム・メリル」の作戦/タリバンとの激戦/「エクトーション・ワン・セブン」墜落の悲劇/現在も続くアフガニスタンの戦い

第6章 イラクの自由作戦 2003年3月20日〜2011年12月15日
知られざる「タスク・フォース20」/イラク軍機甲部隊との戦い/生物・化学兵器研究所への強襲作戦/「サーペント・ターゲット」への空挺作戦/レンジャー最大の作戦/ハディーサ・ダムの攻略・奪取作戦/イラク軍による迫撃砲の猛射/レンジャーと戦闘管制官の連携/自爆テロによる最初の犠牲者/ジェシカ・リンチ上等兵の救出作戦/M1A1戦車とT-55戦車の戦い/重要人物の捕獲に成功/伝説となった近距離戦闘/「タスク・フォース・ノース」の被疑者追跡作戦/アルカイダ指導者ザルカウィの追跡/拉致されたイギリス人ジャーナリストを救出/イラク新政府の作戦介入/イラク・アルカイダのナンバー2を射殺/レンジャー最後のイラク作戦

第7章 進化する第75レンジャー連隊 
変わるレンジャーの任務/レンジャーにも女性進出/「我々は特殊作戦部隊である」

第8章 レンジャーの武器
M9ピストルから新型拳銃へ/M4A1とアサルト・ライフルの更新/スナイパー・マークスマン用ライフル/分隊支援機関銃の多様化/グレネード・ランチャーと迫撃砲

[コラム]
レンジャーの信条 
RASPの必須条件 
パナマ、アラビア湾、ソマリア(1989〜1993年)での軍装
ソマリア(1993年)とアフガニスタン(2001〜2002年)での軍装 
イラクとアフガニスタン(2003〜2007年)での軍装
「不朽の自由作戦」(アフガニスタン、2009〜2013年)での軍装
特殊作戦車両(RSOV)
武勇を讃える部隊賞詞 
陸上機動車(GMV)
M1126ストライカー装甲兵員輸送車 
MH-6リトル・バード特殊作戦用ヘリコプター 

参考文献 
監訳者のことば 

監訳者のことば

 本書『米陸軍レンジャー』(US Army Rangers 1989-2015)は、『M16ライフル』『AK-47ライフル』に続いて、私が監訳を担当させていただいた、ミリタリー研究の分野では定評のあるオスプレイ社のシリーズの1つである。
  著者のリー・ネヴィル氏は同シリーズで数多くの著作があり、兵器についてはもちろん、特殊作戦部隊の組織や運用、その実像について精通している軍事ジャーナリストである。
  私は「レンジャー」部隊といえば、挺進行動によって敵中深く潜入し、破壊活動や特定目標の襲撃、あるいは人質救出などの特別任務を、その卓越した能力と精神力で遂行する「戦闘の鉄人」といったイメージを漠然と抱いていた。
  そもそも「レンジャー(ranger)」の語源は「徘徊者」という意味で、それが転じてアメリカ西部開拓時代に辺境を踏破、パトロールした「テキサス・レンジャー」のように固有名詞化したものだという。
  さらに第2次世界大戦では、アメリカ陸軍が特別に訓練された兵士たちで編成された部隊をもって特殊任務や遊撃作戦を数多く実施し、彼らを「レンジャー」と呼び、イギリス軍の「コマンドゥ」と双璧をなす特殊部隊を表す代名詞として広く知られるようになった。
  本書は、冒頭でアメリカ陸軍レンジャー部隊の起源から第2次世界大戦で果たした任務と戦歴を紹介している。それによれば、かつてのレンジャーの役割が、戦争遂行という大きな歴史の中では重要ながらもそのごく一部であり、きわめて限定的なものであったことがわかる。
  ところが1980年代以降、このポジションは大きく変化していく。本書は、1986年のパナマ進攻「ジャスト・コーズ作戦」から、ソマリア、アフガニスタン、イラクと続く作戦・行動を時系列で詳述しながら、レンジャーの任務が主作戦を有利に運ぶための単なる「尖兵部隊」以上の要求を課せられていく過程とその背景を解き明かしている。
  2001年の9.11テロ攻撃以降、第75レンジャー連隊は同じ陸軍のデルタ・フォース、海軍のシールズ・チーム、空軍の特殊戦術飛行隊などとともに統合特殊作戦コマンドを構成し、いまや対テロ戦争に挑む主力の1つに変貌したのである。
  銃器や小型火器の研究を専門としている私は、軍隊の運用や戦史に関しては熟知しているとは言いがたいが、本書にはレンジャーが装備している武器についての記述も多く、それがまた、描かれている戦闘の実相をリアルに再現しており、その内容の正確さを期すのが監訳を引き受けた所以でもある。
  読み進めるうちに、これまで私が実物を手にしたり、試射したこともある小銃や機関銃も登場し、レンジャーたちが特殊作戦の実際の戦場で、これらの武器をどのように使用し、評価しているのか、新たな知見を教えてくれた。
  読者にとっても、知られざる特殊作戦とレンジャーの実像を明らかにするとともに、現在あるいは将来、アメリカが軍事力を行使する事態が起こったときの近未来戦の様相と、そこでどのような作戦の展開、戦術の実行が可能なのか、予測するうえで多くの示唆を与えてくれるに違いない。

リー・ネヴィル(Leigh Neville)
アフガニスタンとイラクで活躍した一般部隊と特殊部隊ならびにこれら部隊が使用した武器や車両に関する数多くの書籍を執筆しているオーストラリア人の軍事ジャーナリスト。オスプレイ社からはすでに6冊の本が出版されており、さらに数冊が刊行の予定。戦闘ゲームの開発とテレビ・ドキュメンタリーの制作において数社のコンサルタントを務めている。www.leighneville.com
床井雅美(とこい・まさみ)
東京生まれ。デュッセルドルフ(ドイツ)と東京に事務所を持ち、軍用兵器の取材を長年つづける。とくに陸戦兵器の研究には定評があり、世界的権威として知られる。主な著書に『世界の小火器』(ゴマ書房)、ピクトリアルIDシリーズ『最新ピストル図鑑』『ベレッタ・ストーリー』『最新マシンガン図鑑』(徳間文庫)、『メカブックス・現代ピストル』『メカブックス・ピストル弾薬事典』『最新軍用銃事典』(並木書房)など多数。
茂木作太郎(もぎ・さくたろう)
1970年東京都生まれ、千葉県育ち。17歳で渡米し、サウスカロライナ州立シタデル大学を卒業。海上自衛隊、スターバックスコーヒー、アップルコンピュータ勤務などを経て翻訳者。訳書に『F-14トップガンデイズ』『スペツナズ』『欧州対テロ部隊(近刊)』(並木書房)がある。