立ち読み   戻る



はじめに

 多くの銃器が歴史に重要な影響を与えた。ウィンチェスター・ライフルとコルト・リボルバー・ピストルはアメリカ西部を征服した。エンフィールド・ライフルは大英帝国を維持・防衛し、クラッグ・ヨルゲンセン・ライフルは文明をもたらした。モーゼル・ライフルは第2次世界大戦で世界制覇を狙ったが、アメリカのM1ガーランド・ライフルによって阻止された。
  M16ライフル(アーマライトAR-15)は、戦後世代の代表的なライフルとなり、そのライバルはいささか不格好なロシア製アサルト・ライフルだった。
  それは、オートマチック・カラシニコフ・モデル1947、通称「AK-47」である。「カラシニコフ」または「カラッシ」とも呼ばれ、AK-47の名は最初の生産モデルに与えられたものだ。
  同型のライフルは、ロシアだけでなく世界中でさまざまなコピー製品が製造され、それぞれが異なるモデル名で呼ばれている。しかし名称に関わりなく、AKライフル・シリーズが、主要な通常戦争からギャング抗争にいたるまで、現代の紛争に必ずと言ってよいほど登場する銃器のイメージとして確立されたことは確かだ。

 AK-47ライフル(カラシニコフ)とその派生型は、それなりの欠陥と性能的限界を抱えており、兵器として完璧ではない。だが、AK-47ライフルは、アサルト・ライフルと分類される軍用ライフルの最も典型的な製品である。事実、AK-47ライフルは、「アサルト・ライフル」と呼ばれる武器分類の基準を打ち立てた製品の1つでもある。
  AK-47ライフルとその派生型は、ほかのどんな小火器よりも数多く製造されている。ロシア製のオリジナルに加え、海外でコピーされたり、ライセンス生産されたりした製品を総計すると7500万挺と推定される。
  このほか改良型のAKアサルト・ライフルや派生型軽機関銃タイプのRPK、狙撃銃、さらに発展型のサブマシンガンが2500万挺ほど存在する。世界でこれに次ぐ生産量のアサルト・ライフルはアメリカのM16ライフルとその派生型だが、製造総数は800万挺あまりにとどまる。
  基本設計が1947年に採用されて以来、AK-47ライフルは少なくとも20カ国で作られ、多くの国でいまも製造が続けられている。第2次世界大戦直後に制式となってすでに70年以上が経過している。この現役期間も戦後の軍用小銃が達成した最長記録である。今後も長く使い続けられ、その期間をさらに更新するだろう。AK-47ライフルのライバル製品の多くは、1960年代初頭以降に登場した比較的新しいライフルだ。
  当初ロシアに侵攻したナチスドイツを駆逐し、ソビエト連邦を防衛する武器として開発が始められたカラシニコフ・ライフルは、抵抗と反西欧イデオロギーのシンボルともなった。AK-47ライフルは、現在までに世界中の少なくとも80の軍隊と何百というゲリラ、反政府グループ、民兵組織、テロリスト集団、そして犯罪組織によって使用されている。
  AK-47ライフルを讃える意見は批判する意見と同様に多い。性能上の限界にもかかわらず、AK-47ライフルは大小さまざまな武力衝突で多大な影響を与えてきた。戦闘で発揮したインパクトとは別に、カラシニコフは国や文化のシンボルともなった。人々を解放し現指導者を権力の座に押し上げたAK-47ライフルを、その社会が重要視しているというメッセージである。

目 次

はじめに 1

第1章 アサルト・ライフルの誕生 10

黎明期のアサルト・ライフル/ドイツの新型武器「マシン・カービン」/「マシン・カービン」から「マシン・ピストル」へ/短小弾薬のメリット/ドイツの短小弾薬と同一の7.62mm×39弾薬/ソビエトの7.62mm弾薬と7.62mmNATO弾薬の違い/7.62mm×39弾薬の威力

第2章 AKアサルト・ライフル 36

姿を消す競合ライバル/意図的に「公差」を大きくとった設計/部隊全体の火力を増大させた/AK-47ライフルの技術的特徴/3タイプのAK-47ライフル/AKMアサルト・ライフルの開発/AKMライフルの特徴/RPK分隊支援機関銃の開発/AKライフル榴弾発射器

第3章 AK-74アサルト・ライフル 76

新型小口径弾薬の開発/進化する5.45mm×39弾薬/AK-74アサルト・ライフルを採用/AK-74ライフルの派生型/AK-74アサルト・ライフルの特徴/AKS-74ライフルの派生型

第4章 AK100シリーズ・ライフル 94

輸出専用の改良型AKライフル/増えるAK-100のライセンス生産/AK派生型ライフル/汎用性の高いカラシニコフ・システム

第5章 AKライフルの使い方 104

全自動火力を重視するソビエト軍/AKライフルの照準方法/AKライフルの射撃と分解法

第6章 世界の戦場へ 116

AK-47ライフルの配備/「反帝国主義者」のライフル/中東全域に浸透したAKライフル/AKライフルで武装した少年兵/南米のAKライフル

第7章 AKライフルの対空射撃 138

AK-47ライフルの標準的な射撃法/AKライフルの対空射撃法/7.62mm口径か、5.45mm口径か?/頑丈なAKライフル/7.62mm弾薬の威力

第8章 AK-47 vs M16 156

実戦で証明されたAKライフルの威力/AK-47ライフル対M16ライフル/5.56mm弾薬よりはるかに大きな破壊力/ベトナム戦で実証されたAKライフルの性能/M16ライフルをしのぐAKライフルの実力

第9章 人民のアサルト・ライフル 176

「カラシニコフ・カルチャー」/「世界を変えた製品」に選ばれる/AKライフルの輸入は止まらない/AKライフルはニワトリ1羽の値段?/後継銃AN-94ライフルは生産中止/「カウンター・リコイルAK」の開発

[コラム]
カラシニコフ・アサルト・ライフル使用国リスト 9
ミハエル・カラシニコフ 22
7.62mm×39 M1943弾薬 34
AK-47ライフルとAK-47SライフルV型の諸元 51
AKMとAKMSアサルト・ライフルの諸元 62
RPKとRPKS分隊支援機関銃の諸元 70
5.45mm×39弾薬 79
AK-74、AKS-74ライフルとAKS-74uサブマシンガンの諸元 87
RPK-74とRPKS-74分隊支援機関銃の諸元 92
AKMライフル、M16A1ライフル、M14ライフルの諸元 173
AK-74Mライフル、M4カービン、M14A4ライフルの諸元 174

参考文献 195
監訳者のことば 196
訳者あとがき 200

監訳者のことば(一部)

 本書の監訳を引き受けた最大の理由は、著者が実際にベトナム戦争に従軍し、AKライフルで射撃される側にいた点にある。ベトナム戦争の前線にいたアメリカ側の兵士がM16ライフルを酷評し、AK-47ライフルを高く評価していたことは、ベトナム戦争の最中からしばしば伝えられていた。しかし、その話が単なる噂なのか、真実なのかは、部外者にはなかなか判断が難しかった。
  著者のゴードン・ロットマン氏は、ベトナム戦争にアメリカ陸軍特殊部隊「グリーンベレー」の兵器担当要員として従軍した小火器の専門家である。ここには、アメリカ軍側から見たAK47ライフルの評価が記されているに違いないと思いながら興味をもって読んだ。
  想像どおり、本書には、アメリカ側から見たAK-47ライフルの評価が明確に書かれてあり、その評価は、私が想像した以上に高いことに驚いた。何よりM16ライフルを整備していた当事者が、M16ライフルはAK-47ライフルにまさる点がほとんどなかったと正直に書いていることは強く印象に残った。
  私の持論として、軍用ライフルが備えるべき最重要な性能は、「耐久性」と「頑丈さ」である。どんな過酷な状況でも射撃を続けられるライフルこそ、最良な軍用ライフルと考える。その上に優れた「命中精度」が備わっていれば言うことはない。
  特殊部隊の兵器係である前に前線の兵士だった著者もまったく同じ意見で、たとえ手入れが悪く錆だらけになっていても射撃でき、ハンマー代わりにテントの杭を地面に打ち込んでも壊れない頑丈なAK-47は優れた軍用ライフルと評価している。一方のM16ライフルの優位点は、その軽量さと命中精度にあるが、現代戦では命中精度が必ずしも軍用ライフルの最重要性能でないことも本書で明らかにされている。詳しくは本文を読んでいただこう。
  本書の中には、小口径高速弾薬と中口径弾薬の長所と短所についてもわかりやすく記述されている。
床井雅美

 

ゴードン・ロットマン(Gordon L. Rottman)
1967年に米陸軍入隊後、特殊部隊「グリーンベレー」を志願し、各国の重・軽火器に精通する兵器担当となる。1969年から1970年まで第5特殊部隊の一員としてベトナム戦争に従軍。その後も空挺歩兵、長距離偵察パトロール、情報関連任務などにつき、退役時の軍歴は26年に及ぶ。統合即応訓練センターでは、特殊作戦部隊向けシナリオ製作を12年間担当。著書にオスプレイ・ウエポンシリーズの『M16』『AK-47』『ブローニング.50口径重機関銃』など多数。
床井雅美(とこい・まさみ)
東京生まれ。デュッセルドルフ(ドイツ)と東京に事務所を持ち、軍用兵器の取材を長年つづける。とくに陸戦兵器の研究には定評があり、世界的権威として知られる。主な著書に『世界の小火器』(ゴマ書房)、ピクトリアルIDシリーズ『最新ピストル図鑑』『ベレッタ・ストーリー』『最新マシンガン図鑑』(徳間文庫)、『メカブックス・現代ピストル』『メカブックス・ピストル弾薬事典』『最新軍用銃事典』(並木書房)など多数。
加藤 喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。アラスカ州立大学フェアバンクス校ほかで学ぶ。88年空挺学校を卒業。91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。著訳書に『LT』(TBSブリタニカ)、『名誉除隊』『アメリカンポリス400の真実!』『ガントリビア99』『AK-47ライフル』『MP5サブマシンガン(近刊)』(並木書房)がある。