まえがき
本書は、日常見かける警察官・消防士の服装や装備品から、兵士が戦場で着用する戦闘服や個人装備、海中で使用する潜水装置、果ては宇宙服までを取り上げて、その使用法を含めて、可能な限りビジュアル的に解説を加えたものです。
生身の人間が過酷な環境で着用する服装や装備品を、著者の個人的な趣味にそって集めたイラスト集と言い換えてもいいでしょう。
現代のこうした服装や装備品の多くは、最先端の科学技術の集大成であり、それらはいずれも機能美にあふれ、カッコの良さがあります。それを少しでも味わっていただきたいと思い、この本を作りました。
今や人間の活動範囲は、宇宙から深海にまで到達し、過酷な環境下でさまざまな作業を行なっています。しかし、それは人間の身体が強くなったためになされた成果ではありません。いまだ人間の生身の身体は過酷な環境にそのまま対応できるほど強くありません。暑さや寒さに弱く、気圧の高低差が大きいところでは生活できず、紫外線が少し強いだけでも健康をそこないます。
だから過酷な環境に対応できるようにするツールが必要になり、それらが本書で紹介したような服装や装備品です。
ところで、機能性や性能を向上させるために人間工学まで使って開発された現代の服装や装備品ですが、基本的な部分にはあまり変化がないと言えるかもしれません。それは人間の身体を守り必要最低限の要求を満たすというシンプルな目的のために作られているからだと思います。
その一例として、目次ページにローマ時代の重装歩兵とその個人装備品のイラストを載せましたが、性能や機能性は今日の兵士の個人装備に遠く及ばないものの、よく見ると基本的な品目はあまり変わっていないことに気づかれると思います。
さらに面白いことに、最新技術を使って作られているそれらの形態が次第に昔に戻っていることにも気づかれるでしょう。兵士の戦闘服や装備は銃弾から身を守るために改良を重ねた結果、かつての甲冑のような形態になりつつありますし、宇宙服や大気圧潜水服などは甲冑そのものとも言えるでしょう。
長々と「まえがき」を書きましたが、著者の本当に言いたいことは「本書をお楽しみください」です。
宇 宙 服 36