元米軍大尉が教える!!軍隊式英会話術
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元米陸軍大尉が教える!![軍隊式英会話術]
   
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【軍隊式英会話術】 第4回

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◆【軍隊式英会話術】 vol.4
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プロの語学力のレベルは?                  Takashi Kato
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4時間目 プロの語学力のレベルは?


アメリカ国防省外国語学校(DLI)の学生には厳しい目標が課せられています。

語学力ゼロからはじめ卒業時には職務で使える、2(聴解)・2(読解)・2(会話)
というものです。

アメリカ人にとって比較的容易なスペイン語やフランス語も、もっとも難解なアラビア
語や日本語もこのゴールは同じです。

不公平なようですが、そんなことはありません。学ぶ側が感じる難易度にかかわりなく
、最低このレベルの語学力がないと海外に出て任務がこなせないからです。

レベルは政府機関語学会議スケール(Interagency Language Roundtable: ILR)に
よって定められています。

もともとは外務研修所(Foreign Service Institute:国務省の外交官養成機関)が作
ったものですが、外国語を必要とするすべての政府機関で共用されています。
陸海空軍海兵隊(Army Navy Air Force Marine Corp)の語学兵も、
連邦捜査局(Federal Bureau of Investigation)や
中央情報局(Central Intelligence Agency)の特別捜査官(Special Agent)も、
国家安全保障局(National Security Agency)、
平和部隊(Peace Corp)
米大使館(U.S. Embassy)の語学専門官(Language Specialist)も
同じスケールで評価されます。

言うまでもなく、オリエンテーション時の学生は聴読話すべてレベル0です。
かつて座間や横須賀に駐留してことがありカタコトが話せる軍人でも、ILRスケールに当
てはめると0+、つまり、サバイバルに必要な単語や決まり文句の丸暗記程度が関の山で
しょう。

うわべの流暢さとILR評価は必ずしも一致しないのです。
後者は実務的語学力、つまり、与えられた仕事を達成できることが前提とされているから
です。宴会で面白おかしく話せるだけでは駄目なのです。

実際、米軍人と日本人女性の間に生まれ、高校生までアメリカンスクールに通ったと言う
ハーフの学生ですら、プロの語学力には程遠いでしょう。

彼らは日常会話なら一応こなせますが、レベル2で要求される能力、たとえば人、物、場
所の描写。道順、小銃などの操作手順や入隊手続きの説明。最近の出来事の要約などが意
外とできないのです。

なまじお茶を濁す術は知っているので、難しいトピックにぶつかると、当たり障りのない
話で避けてしまうからです。

63週間で実務に耐えうる外国語を身につけることの難しさは、次の思考実験
(thought experiment)をしてみるとよく分かります。

まず英語でも中国語でもフランス語でもいいから、ほとんど分からない言葉を選びます。

そして1年半後に、現在の自分の職務や、転職希望の仕事をその言葉でこなす様子を想像
してみてください。

事務にせよ経理にせよ営業にせよ、母国語でも初めは戸惑った仕事を外国語でやる。これ
は容易なことではありません。

しかも専門職ならそれ相応の専門語(jargon)も知らなければならないのです。
DLIの学生の場合、職種は歩兵、砲兵、工兵、衛生兵、爆発物処理班員、飛行教官、特
殊戦部隊員、犯罪特別捜査官、尋問官などさまざまです。

軍の任務は潜在的に危険をはらんでいます。
米軍衛生兵が自衛隊の負傷兵から症状を聞けなかったり、爆発物処理班員が信管のはずし
方を説明できなかったり、飛行教官が空中衝突を避ける場合、とっさに回避行動を指示で
きなかったりしたら、すぐさま自他の命にかかわってきます。

このような過酷なプレッシャーの下では、うろ覚えの日本語などたちまち吹き飛んでしま
うものです。だからDLIでの日本語勉強そのものは危険のない任務だとは言え、日本語
習得にかける職業軍人(career soldiers)たちの決心には悲壮なものがあります。

読者の方々がこのサイトで学ぶ場合、DLIでの63週間という時間の制約や軍隊任務の
悲壮感はありませんが「ぜったい英語をものにする」という心構えは不可欠です。

生半可な動機で漫然と勉強していては、何年たっても日常会話すら身につきません。実務
で使える英語となれば、さらに望み薄です。

したがって、まず、英語をものにしたい理由と目的をはっきりさせておいてください。

「英語が話せたら便利だから」とか「留学したいから」というぼんやりとした動機では駄
目なのです。

もっと具体的かつ将来構想に直結した目標が良いでしょう。
「国際会議通訳になりたい」「国連弁務官として世界平和に貢献する」「米軍士官になり
たい」「米航空宇宙局で宇宙飛行士を目指す」「アメリカで看護婦、医師、弁護士のなど
の資格を取る」「シリコンバレーでベンチャー企業を立ち上げる」「米国でプロスポーツ
選手になる」など、情熱と夢を反映していればなおさらけっこうです。

目標と動機付けが固まったら、次は勉強の筋道と到達目標を決めます。

会話でいえば、たとえばまず最初の3〜4カ月で0+(プラス)。
次の4〜5カ月で1。
次の7〜8カ月で1+。
次の9〜10カ月で2、という具合です。

日本人の場合、基本的な英語の知識はあるので1〜1+まではさほど難しくないかもしれ
ません。

しかし、丸暗記から応用に移行するその後が正念場になるでしょう。

以降、米軍で使用されている具体的な進歩行程条件を使いながら、皆さんと一緒に米軍式
英語マスター戦略を考えてみることにします。

5時間目の授業をうける。


DLIでの授業風景はこちらからどうぞ。
DLI写真館
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【著書の紹介】
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