元米軍大尉が教える!!軍隊式英会話術
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元米陸軍大尉が教える!![軍隊式英会話術]
   
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【軍隊式英会話術】 vol.35

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◆【軍隊式英会話術】 vol.35
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エアボーンスクールで鍛えよう(2)              Takashi Kato
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35時間目 エアボーンスクールで鍛えよう(2)


ドアに立つと、10数メートル下の地面がはっきり見えます。降下姿勢を採点するブラックハット
も目に入ります。

下から見あげるとたいした距離ではないのですが、この34フィート降下訓練塔は、人間の目に一
番恐怖心を与える高さ(the most terrifying height)を選んで建てられているようです。

足がすくみます(feeling weak in the knees)。

塔があまり高いと地上の物体の立体感(three-dimensional appearance)が失われ、遠近感覚
(perspective)がなくなり、怖いとは感じなくなるのです。

 "GO!"

ブラックハットの命令に、えいっとばかり飛び出し、両手を胸の予備落下傘(reserve chute)に
押し付けます。

 "One One Thousand, Two Two thousand……."

4秒たったところで両肩のハーネスをつかみ、

 "Check Canopy!"

と叫んで頭上を仰ぎ見ます。Canopy は「天蓋(てんがい)」とか「覆うもの」のことですが、こ
の場合はパラシュートをさします。

正常に開いているかどうかチェックするわけです。もちろん今日はケーブルに吊るされているので
心配ないのですが、実際の降下で落下傘がからんだりしたら、この時点で予備パラシュートを自分
で開かなければなりません。

ケーブルを勢いよく下り、30メートルほど先の土手がぐんぐん近づいてきます。

 "Spread-eagle!!"
 "Roger that, Sergeant Airborne!"
 (了解、空挺軍曹!)

土手の上でブラックハットが叫びます。Spread は「広げる」で、Eagle は「鷲」ですね。これは
文字通り翼を広げた鷲、つまり米ドル紙幣にも見られるアメリカ合衆国の紋章(crest)のことで
す。
転じて人が両手両足を広げる意味にも使います。手足をつかんで止められるよう、大の字になれと
言ったのです。

ケーブルを使っての降下訓練は、集団降下(mass exit)がスムーズに行なえるようになるまで何
回も繰り返されます。
列の最先端で地上を見下ろしていても、真ん中でも最後尾でも、一瞬の躊躇もせずに(without
hesitation)ジャンプできなくてはならないのです。

実際の輸送機(transport plane)の中では機体後部(rear fuselage)の左右降下ドアに向かっ
て何十人もの兵士が2列に並んでいます。
誰か1人でもパニックを起こして動けなくなれば、集団降下はそこでつかえてしまいます。
そうなったら、輸送機はあっという間に降下地域(Drop Zone: DZ)を通り過ぎます。直ちに旋回
(turn)してやり直すことになりますが、実戦(actual wat)なら低空で旋回する巨大な輸送機
(low-flying big transport plane)は対空砲火(anti-aircraft fire)や携帯地対空ミサイル
(portable surface to air missile: SAM)の格好の標的(sitting duck)です。

軍隊では個人のミス(individual mistake)が多くの兵士を危険にさらす(put soldiers in harm's
way)ことになります。本番でそうならないために、訓練ではわざと一番怖い高さから飛び出して
恐怖心をねじ伏せる(suppress the fear)のです。

すべて自前の民間パラシュート学校(civilian jump school)なら、飛び降りる寸前に怖くなって
も止められます。
陸軍空挺学校(U.S. Army Airborne School)ではそうはいきません。

空挺降下(military jump)はスポーツではないからです。銃を持って待ち構える敵がいるかもし
れない地上に、それでも降下できる勇気(courage)と体力(physical strength)と使命感
(sensei of mission)をもった落下傘兵(paratrooper)を育てるのが任務(mission)なので
す。

集団降下訓練に合格(pass)すると、次はいよいよ実際のパラシュートによる降下です。ベニング
基地の目印(landmark)にもなっている地上80メートルの鉄塔からジャンプします。
実際の降下に先立ち、人形による降下実演(demo jump)があります。階段式の見物席
(bleacher)に陣取った学生たちの肩に大粒の雨が落ちてきました。

急に暗くなり、風も出てきました。完全装備の人形(a doll with full equipments)が塔の上で
さなぎのように揺れています。南部特有の夕立(shower)です。
目の前の塔がかすれて見えるほどの雨脚ですが、ものの数分で上がり青空が戻ってきました。強烈
な日差しに、地面から湯気が立っています。
ヘルメットの中に熱気がたまり、ぼうっとするほどです。学生の中には、不平を漏らす者もいます。
ブラックハットが聞きつけ、

 "What do you want to be, Legs?"
 (お前たち、何になりたいんだ?)

と気合を入れます。Leg は空挺でない歩兵に対する蔑称であることを思い出してください。

 "Super-duper paratrooper, Bad Ass, Sergeant Airborne!"

この答えはスラングで、日本語にしてもあまりピンときません。語呂合わせ(play on words/pun)
だからです。
でも、軍では頻繁に使う表現ですし、ものは試しですから挑戦してみましょう。

Super は日本語にもなっているスーパーです。スーパーマンやスーパーカーの意味です。Duper
に意味はありませんが、スーパー デューパーという似た音の組み合わせが良いリズムを作ってい
ます。「超一流の」とか「格別の」くらいの意味でしょうか。

Paratrooper は落下傘兵のことで、これもパラトルーパーの「パー」が前述の二語との語呂合わせ
です。

Ass は「ロバ」とか「頑固者」「野郎」「尻」とかいずれにしてもあまり良い意味ではありません。
これに Badがついて Bad ass になると「すごいヤツ」とか「手に負えない剛の者」といった、ある
種のほめ言葉(compliment)になるようです。
ですから全文では「超一流のすごい落下傘兵になります、空挺軍曹!」でしょう。

英語の発音なら「スューパー デューパー パラトルーパー バッド アス、サージャントエアボー
ン!」となり、なかなか軽快ですね。

さて、降下の準備が整いました。全員が固唾(かたず)を呑んで見守る中、人形がガタンと揺れて
落ち始めました。見る見る加速度がつき……、そのまま地面に吸い込まれ、俵(たわら)が地面を
打ったような鈍い音が響きました。

 "The parachute didn't open!"
 (パラシュートが開かなかった!)

沸き立つ熱気にもかかわらず、身震いしたのは誰しもおなじです。もしあれが生身の人間で、運悪
く即死でなかったら、身体中の骨が砕け、内臓も破裂して激痛にさいなまれているはずです。
ブラックハットたちの表情は読み取ることができません。彼らはすぐに学生たちを次の訓練地に引
き立てていきます。まるで何事もなかったかのようです。

 "What do you want to be, Legs?"
 "Super-duper Paratrooper, Bad Ass, Sergeant Airborne"
 "Can't hear you, Legs!!"
 (聞こえないぞ!)
 "Super-duper Paratrooper, Bad Ass, Sergeant Airborne!!"
 "That's the spirit, Legs!"
 (お前ら、その意気だ!)

目の前で起こったことが、果たして「演出」(staged)だったのか雨に濡れた装備の「事故」
(accident)だったのか分かりません。
しかし、明日の朝礼で学校を去る「臆病者」(quitters)が増えるのは間違いないようです。


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