元米軍大尉が教える!!軍隊式英会話術
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元米陸軍大尉が教える!![軍隊式英会話術]
   
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【軍隊式英会話術】 vol.31

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◆【軍隊式英会話術】 vol.31
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ブートキャンプで鍛えよう!(2)                Takashi Kato
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31時間目 ブートキャンプで鍛えよう!(2) 


  "2nd Platoon, Fall in!"
 (第2小隊、整列!)

食後のリラックスした空気に、ドリルサージャントの声がカツを入れます。気持ちが引き締まり
ます。

今回は兵舎のある駐屯地(garrison)を出て、訓練地まで行進します。歩兵訓練の始まりです。
ケルバーヘルメットにM16自動小銃、ハーネスには応急手当パウチや予備弾倉、水筒などが鈴
なりです。

一人前の兵隊に見えますが、行進できなければ本物の歩兵(grunt)とは言えません。

 "Parade, rest!"

号令に反射的に反応していますね。もう Parade, rest → 翻訳 → 日本語で理解(休め)→ 動作
、という回り道をしていない証拠です。
 Way to go!
 (その調子です!)

中隊曹長(Company First Sergeant)がやってきました。号令に注意を集中してください。

 "Company!"
 (中隊!)

間髪をいれず小隊軍曹である(platoon sergeant)ドリルサージャントが右肩越しに、
 "Platoon!"
と叫びます。中隊曹長の
 "Attention!"
で中隊全員が気をつけ姿勢(position of attention)をとります。

コンバットブーツ(戦闘軍靴)が触れあう乾いた音が響き、あとは物音ひとつしません。緊張感み
なぎる静寂です。

中隊曹長がその場で回れ右(About face)をしました。正確かつ無駄のない動作です。
やがて、視野の右隅から誰かがやってきました。中隊長(Company Commander)です。
いつもは少し離れたところから軍曹たちの訓練ぶりを観察しているこの大尉は、ほとんど神々しい
存在です。

百戦錬磨のドリルサージャントたちが「殿」(Sir)と呼び、きびきびした敬礼を送る様子から、
その権威がうかがい知れます。

中隊曹長が敬礼しその場を去ると、それまで小隊の前に立っていたドリルサージャントたちもそれ
にならい、代わって小隊長(Platoon Leader)の少尉(Second Lieutenant)が各小隊の前に立
ちます。

中隊長の訓示の準備が整いました。

 "Company!"
 "Platoon!"
 "Parade, Rest!"

中隊総勢百数十人の一糸乱れぬ動作です。読者の身体も反射的に動きました。反復練習の賜物です。
外国語で遜色なくやっているのですから達成感や一体感は格別です。

 "Good Morning, soldiers!"
(兵士諸君、お早う!)
 "Good Morning, sit"
(大尉殿、お早うございます!)
 "We will go tactical for a few days. We will test you if you got what it takes to
  be grunts!"

Tactical とは戦術のことですが、中隊長が言う "go tactical" は「演習状況に入る」と言う意味
です。
これまで駐屯地で習得した基本的な歩兵技能を、野戦状況でテストされるのです。
大尉が if you got what it takes to be grunts と言ったのはその意味です。
What it takes で「必要なもの」to be grunts は「本物の歩兵になるために」ですね。If はこの
場合「……かどうか」に当たります。

全文では「諸君らが本物の歩兵になるために必要なものを持っているかどうかテストする!」です。

 "Are you ready, soldiers?"
 (兵士諸君、準備は良いか?)
 "Yes, sir!"
 "Can't hear you!"
 (聞こえないぞ!)
 "Yes, sir!!!"

中隊全員が腹の底から声を振り絞って答えます。気合が周りの空気をびりびり震わせ、自信とやる
気が湧いてきました。

 "That's the spirit, Hurrah!"
 (その意気だ!フラーッ!)

Hurrah は日本語で言えば「オーッ!」みたいな掛け声です。

 "Hurrah, Sir!"
 (フラーッ、大尉殿!)
 "Now you are psyched up. Good!"

Psyche はもともと心理学用語で「精神」のことですが、俗語になって動詞としても使われるよう
になりました。
「気持ちを高揚させる」とか「心構えをする」、つまり「気合を入れる」ということです。
中隊長は「気合が入ってきたな。いいぞ!」と言ったのです。"Fired up" と言うこともあります。
軍隊では隊列を作って行進したり駆け足したりするとき、歌を歌います。Cadence と言いますが
文字通り「拍子」のことです。
大人数の歩調にリズムを与えるためのものです。

また、士気を高め部隊の団結心(Esprit de corps) を養う役割もあります。
兵隊仲間で歌う行進歌は心身ともに疲労困憊しているときに、苦痛を軽減させてくれるものです。
行進歌はユーモアのあるものや軍隊生活の哀愁を歌ったもの、兵隊の誇りを鼓舞するものなどさま
ざまです。

隊列の隣につくドリルサージャントが先に歌い、全員で繰り返します。
もちろん伴奏などありませんから、軍曹たちの歌唱力は相当なものです。
昔、とび職や火消しが重いものを運ぶときに歌った「木遣(きやり)」に通じるものがあります。
外国語で歌うのは至難ですが、これも英語の訓練です。
おっ、ドリルサージャントが歌い始めました。

 "Here we go again
 Same old stuff again
 Marching down the avenue
 Six more weeks and we'll be through
 I 'll be glad and so will you"

 さあまた行くぞ
 いつもと同じ通りを行進だ
 あと6週間で卒業だ
 ぼくもあんたもうれしいさ

簡単な英語ですが、口語表現なので一字一句日本語に「翻訳する」のは不可能です。
しかし、毎日の辛い新兵訓練の中で歌ってみると、意味がそのまま伝わってきます。
外国語は「状況の中で感じ取る」しかないのです。

その状況に対応するしっかりした母国語があれば、意訳は自ずと出てくるようになります。
文法の理解だけでは外国語が話せない所以(ゆえん)です。
想像力を駆使して、何曲か一緒に歌ってみましょう。

次は歩兵の歌です。
Eighty-second は第82空挺師団、One Oh One は第101空挺師団、Big Red One は第1師
団の部隊パッチ(実際、赤い数字で1書かれています)。

Green Berets は緑のベレー帽からきた陸軍特殊部隊の別名でいずれもエリート部隊です。
そして Chairborne Rangers は Airborne Rangers(空挺レインジャー)をもじったデスクワー
クの兵士のことです。

 Eighty-second
 Patch on my shoulder
 Pick up your chutes and jump with me
 I am the Infantry

 第82空挺師団
 部隊パッチを肩に
 パラシュートをとって供に降下だ
 我こそ歩兵

 One-oh-one
 Patch on my shoulder
 Pick up your weapons and follow me
 I am the Infantry

 第101空挺師団
 部隊パッチを肩につけ
 武器を持って続け
 我こそ歩兵

 First Division
 Big Red One
 Pick up your weapons and follow me
 I am the Infantry

 第1師団
 ビッグレッドワン
 武器を持って続け
 我こそ歩兵

 Airborne Ranger
 Tabs on my shoulder
 Pick up your weapons and follow me
 I am the Infantry

 空挺レインジャー
 レインジャー章を肩に
 武器を持って続け
 我こそ歩兵

 Special Forces
 Green Berets
 Pick up your weapons and follow me
 I am the Infantry

 特殊部隊
 グリーンベレー
 武器を取って続け
 我こそ歩兵

 Chairborne Rangers
 Sitting at a desk
 Pick up your pens and write with me
 I'm not the Infantry

 チェアボーンレインジャー
 机にむかって
 ペンを取って一緒に書け
 自分は歩兵じゃない、と!

おや、ドリルサージャントの声音が変わりました。低い、咽(むせ)ぶような声です。ブルース
歌手みたいですね。
兵隊生活の悲哀を歌ったもののようです。

今は砂漠迷彩などに変わってしまいましたが、Army greens というのは陸軍の軍服のことです。
ここでの use は使うという意味ではなく、used to で「昔は……をしたもんだ」の意味です。
Hump は日常生活ではあまり使わない動詞ですが、重いものを担ぐという意味があります。
また、Hug は「抱く」ですが、ここではM16小銃と寝るときも一緒だ、ということです。

 Momma, momma, can't you see
 What the Army has done to me
 They took away my faded jeans
 Now I am wearing Army greens

 ママ、ママ、陸軍がぼくにしたことを見てくれ
 連中はぼくの色褪せたジーンズを取り上げて
 今じゃ陸軍の軍服を着ているんだ

 Momma, momma, can't you see
 What the Army has done to me
 Used to drive a Cadillac
 Now I hump it on my back

 ママ、ママ、陸軍がぼくにしたことを見てくれ
 昔はキャデラックを運転していたのに
 今じゃ何でも背中に背負ってる

 Momma, momma, can't you see
 What the Army has done to me
 Used to date a beauty queen
 Now I hug my M-16

 ママ、ママ、陸軍がぼくにしたことを見てくれ
 昔は綺麗な娘とデートしたのに
 今じゃM16小銃を抱いて寝るんだ。

次の曲は茶目っ気のある陸軍の悪口みたいな曲で、新兵のお気に入りです。
Mighty は普通は「強力な」ですが、俗語になると「途方もなく」というような意味になります。
Turpentine は松脂(まつやに)油のことで、とても飲めたものじゃないの意です。

Wanna go は want to go が訛(なま)ったもので、会話ではよく使われますから覚えておいて
ください。
Marking time(mark time)は軍隊用語で「足踏み」のことを言います。

 They said that in the Army the coffee is mighty fine
 It looks like muddy water and tastes like turpentine
 Oh, Lord, I wanna go
 But they won't let me go
 Oh, Lord, I wanna go hoo-hoo-hooooome EH!

 陸軍のコーヒーはすごく美味いって話だけど
 泥水みたいで、松脂油の味がする
 おお、主よ、帰りたいんです
 でも、陸軍は行かせてくれない
 おお、主よ、家へ帰りたいんです、イェイ!

 They said in the Army the chow is mighty fine
 A chicken jumped off the table and started marking time
 Oh, Lord, I wanna go
 But they won't let me go
 Oh, Lord, I wanna go hoo-hoo-hooooome EH!

  陸軍では飯がすごく美味いって話だけど
 チキンがテーブルから飛び降りて、その場で足踏みを始めたよ
 おお、主よ、帰りたいんです
 でも、行かせてくれない
 おお、主よ、家へ帰りたいんです、イェイ! 

 They said that in the Army the pay is mighty fine
 They give you a hundred dollars
 And take back ninety-nine
 Oh, Lord, I wanna go
 But they won't let me go
 Oh, Lord, I wanna go hoo-hoo-hooooome EH!

 陸軍では給料がすごく良いって話だけど
 100ドルくれても99ドル取られるんだ
 おお、主よ、帰りたいんです
 でも、陸軍は行かせてくれない
 おお、主よ、家へ帰りたいんです、イェイ!

このような行進歌を来る日も来る日も、雨の中、風の中でも歌い続け、新兵は次第に一人前の
兵士に鍛え上げられていくのです。

おや、先頭の小隊が足踏み(mark time)を始めました。歌でリズムと一緒に覚えると簡単
でしょう? 演習地に着いたようです。

次回は、実際に演習に参加します。

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 斎藤吉久(さいとう・よしひさ)のプロフィール 
1956年、福島県生まれ。弘前大学、学習院大学を卒業後、総合情報誌編集記者などを経て、
現在はフリー。オフィス斎藤吉久を主宰。得意分野は、天皇・皇室、宗教、歴史、食文化な
ど。雑誌「正論」平成19年9月号に「靖国問題を問い直す9つの視点」、同10月号に「昭
和天皇の『不快感』は本当か」、同11月号に「信仰を忘れた聖職者たち」を執筆。最近の雑
誌発表記事などは「斎藤吉久Webサイト」で読める。
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